将棋の海外伝播などについてのブログ

『ハチワンダイバー』が『このマンガを読め！ 2008』でも2位に

　柴田ヨクサル氏原作の『ハチワンダイバー』は怒涛の勢いのようだ。

マンガランキング：07年の１位は「ハチワンダイバー」「海街ダイアリー」　ガイド書2誌で(まんたんウェブ) - 毎日ｊｐ(毎日新聞)

　テレビアニメ化は決まらないのだろうか。なかなかアニメ化が難しいマンガかもしれないが。柴田ヨクサル氏の前作『エアマスター』はアニメ化されている。

 

20年以上前に書かれた語学留学生の文章 - ロンドンに将棋の天才がいた

　田山海彦さんという、1983年から1987年までロンドンに語学留学していた方が、当時に書きとめられた文章を I LOVE LONDON 語学留学つれづれ草というサイトで発信しているのを最近見つけた。20年以上も前から、ロンドンで将棋が指されていたことや、日本将棋連盟から棋士が派遣されていたことの貴重な証言となっている。ぜひお読みください。

ロンドンに将棋の天才がいた

　この文章が書かれた当時は、筆者はまだ将棋が海外で指されていることを全然知らなかった。その時期に、上記のような文章が書かれていたのが興味深い。チェスについて書かれている以下も読み応えがあった。

グランドマスターとチェスをした

マンガ「テニスの王子様」のキャラクター真田弦一郎の趣味は将棋

　週刊少年ジャンプにて長期連載中の人気マンガ『テニスの王子様』に出てくる、真田弦一郎というキャラクターの趣味の一つが将棋ということだ。以下は Wikipedia からの引用（太字による強調は筆者による）。

テニスの王子様の登場人物

真田弦一郎（さなだ げんいちろう） （3年・副部長） （声優：楠大典）

全国を2連覇していながらも手塚を倒していない事に常にわだかまりを感じていたが全国の決勝S3にて対戦、勝利する。居合い抜きが得意で、その技術を『風』に応用している。忍足侑士曰く、トップスピンロブを同じライン上に1000回でも決めれるほどのコントロールを持つ百戦錬磨。趣味は筋トレ・将棋・書道。

　このところ『テニスの王子様』について書かれている英語のブログで、立て続けに shogi, shougi という文字を目にしている。

xp_home: XP App: Sanada Genichirou

Sanada is well-versed in kendo, judo, calligraphy, keigo, shougi (Japanese chess), and is particularly skilled with a katana.

Journal of the Maya - OMG. Yes.

Because Yanagi plays go and shogi and also does tea ceremony.
Because Inui ALSO plays go and shogi (and othello and chess).

　Yanagi は柳、Inui は乾で、いずれも同マンガの登場人物である。何巻のどのあたりに将棋に関するシーンがあるのか未確認だが、とにかく、『テニスの王子様』が海外でも読まれており、マンガ上で将棋が出てくるらしい、ということが上記の２つのブログからわかった。

　なお、あまり知られていないことだが、テニス界にも将棋が好きな人物は居る。

テニスも将棋も・・・ - 岩渕聡オフィシャルブログ　IWABUCHI BLOG - テニスブログ｜テニス365

まだ２０歳くらいの頃、貴男と行った遠征で将棋にはまっていた時があり、今回は約１０年ぶりにそれが復活！です。

　ここに出てくる貴男というのは、鈴木貴男選手のことだと思う（公式ページ）。岩淵選手との将棋対局には触れていないが、同公式ページのメッセージに興味深い文章がある。

2007/10/15 ＶＩＰ・ＴＯＰテニススクール（鈴木貴男 - Official Home Page、メッセージ）

ネットプレーの反応ですが、テニスと言うスポーツにおいて反応というのは速いに越したことはありません。しかしそれよりも予測という物を大切にしてはどうですか？２００キロ以上のサーブは、反応してからでは取れないほどコンマ数秒で飛んできます。その他のショットもしっかり構えられたらボールが飛んできたからでは、反応できません。ということは、自分が打ったショットに対して、相手の体勢やクセ・ラケット面をしっかり見て、ある程度の予測をするのです。それによって打つコースが限定されるので、先に動くことが可能になってくるのです。それを繰り返していけば、反応も少しずつ速くなるかもしれませんよ。テニスは予測のスポーツであり、将棋みたいに先を読んで理詰めにすることも可能です。

　テニスと将棋は、思った以上に接点があるのかもしれない。テニスはワールドスポーツなので、将棋もそれにあやかれればいいと思う。

『しおんの王』を見て、夫婦で将棋を始めたという英語コメント

　筆者の英語のブログのほうに、本日以下のようなコメントをもらった。

Takodori's Entrance to Shogi World: A reviewer of "Shion no ou" played Hamshogi and found shogi hard.

Shion no Ou was actually what got my wife and I into playing shogi. Yes, it's hard, but it's a fun and exciting challenge! I hope that more people will come to enjoy shogi through this anime.（『しおんの王』が、妻と私が将棋を指してみるきっかけになったのは本当のことです。言われるとおり、将棋は難しいです。でも、面白く、エキサイティングな挑戦でもあります！もっと多くの人が、このアニメを通して将棋を楽しむようになればいいと思います。）

　このコメントをくれた方は、宗教学を専攻し、仏教や禅の研究をされているようで、ご自身のブログがある。

Gladsome Light

　このブログの左上のほうに、彼のプロフィールが書かれている。そこに、趣味や好きなことも書かれており、

I like to play the clarinet, listen to classical and Irish traditional music, learn Byzantine chant, play shogi (Japanese chess), and watch anime (check out the psychologically fascinating drama Monster).

　嬉しいことに、将棋を指すことが好きだと言ってくれている上に、Wikipedia 英語版の将棋の項目へのリンクも張ってくれている。これは、将棋アニメが英語圏で見られることによって将棋が知られ、興味をもって指してみる人が現れただけでなく、他の人にまで勧めてくれている実例である。

「なんで将棋を？」 - 松本隆氏、羽海野チカ氏対談

　作詞家の松本隆氏と羽海野チカ氏の対談がネット上で読める。『３月のライオン』の部分を抜粋する。

風待茶房

●松本
質問なんだけど、なんで将棋をテーマにしたんだろう？

●羽海野
まず“戦っている人”を描きたかったんです。

●松本
なるほど。

●羽海野
それから、主人公は何かしら、自分とシンクロするところがあって欲しいと思ったんです。それで「職業として将棋をやっているけれど、自分の生活とうまく両立できない」という感じにしようと思って。将棋と漫画にどこか「近い」ものを感じたんです。

●松本
１７歳でプロ棋士って、天才だよね。

●羽海野
今まで４人くらいしかいないみたいですね。将棋は興味があって、覚えたてだったので、なんて面白いんだろうと思っていて。

●松本
あぁ、そうなんだ。やっぱり好きだったんだね。

●羽海野
最初は編集者さんに興味があるって言ったら指し方を教えてもらえて。取った駒を自分のものにして使えるなんて、聞いたことが無いすごいゲームだ！！、と思いました。それで、「これをやっている人たちの頭の中ってどうなってるのかしら？」、というほうに興味が移って。頭の中に宇宙が入ってそうな、怖い人たちを描きたいなと思いました。

　このブログではあまり書いたことがないが、筆者は、メディア業界の中に将棋ファンが多くいることは結構将棋の普及にとって重要なことだと思っている。上記を読む限りでは、羽海野氏は、こどもの頃から将棋を指していたというわけではなくて、大人になってから、仕事上でつきあいのある方が、話が出たときにすぐに教えてくれた、という事情が語られている。つまり、担当の編集者が将棋を知らなかったら、もしかすると、『３月のライオン』の連載は生まれなかったかもしれない、ということだ。彼がたまたま将棋を人に教えられるほどに知っていたのは将棋界にとって僥倖だったのではないだろうか。

『ハチワンダイバー』が『このマンガがすごい！ ２００８』のオトコ編１位に

　将棋界への追い風は続いている。宝島チャンネルより。

このマンガがすごい！　２００８

オトコ編１位インタビュー
柴田ヨクサル「ハチワンダイバー」

とのこと。『３月のライオン』の羽海野チカ氏のインタビューも所収されるという情報。

　これがきっかけになって、海外でも『ハチワンダイバー』が見直されるようになってほしい。筆者の印象では、『しおんの王』や『３月のライオン』ほど海外では話題にされていないようなので。

国境を超えた将棋グッズのオークションは盛んになるだろうか

　当ブログとしては、本日一番のニュースである。

ヤフーと米イーベイ、ネット競売で提携・相互に出品　（NIKKEI　NET)

双方の会員が相手国で出展された品目に簡単に応札できるようにする。

　年内に共同サイトを開設し、ヤフーのオークション利用会員が日本からイーベイの北米向け品目の入札に日本語で参加できるようにする。来年3月末までにヤ フーの競売サイトである「ヤフー！オークション」内に米イーベイの出展品目が自動表示され、会員がそのまま入札できるようにする。

　これ、品物を外国に送るときのサポートはどうなるのだろうか。国内は宅配業者が発達しているので運送状上でのトラブルは最小限に近いのだろうが、個人で輸出するとなると、国内の落札社者に賞品を届けるよりも敷居が高くなるのは必至。だが、いずれにせよ、これは将棋の盤駒、棋書、将棋ソフト、将棋マンガ、そのほかレアものの将棋グッズなどの国境を越えた流通が今よりも盛んになるきっかけとなりうると考える。

ハム将棋で将棋が簡単なゲームでないことを知った「しおんの王」の英語のレビュー主

　先週土曜の夜に放映された「しおんの王」第８話についてのレビューが１２月２日の段階で英語であがっている。レビュー主はそのレビューが書かれるまでの早さから、多分、日本に住んでいてリアルタイムで番組を見ている外国人の方ではないかと思われるが、その方が、レビューの中でハム将棋と対局してみて将棋の難しさを知ったというエントリーがあるのでご紹介（日本語訳は筆者による）

Star Crossed Anime Blog :: Shion no Ou - 08 :: December :: 2007

Also, after playing a few shougi-games myself here (link, thanks to Daijin), I’ve gotten even more respect for the different characters of this series. Really, shougi is hard. It’s really much, much harder than it looks. The pieces can really come from nowhere, there are so many holes that can be created in your defence, and you really need to take care of all of them if you don’t want to fail miserably. The shougi-match between Shion and Saori in the last episode, I really can imagine how one simple move can turn the entire tables for one match.（また、ここのリンク先で（Daijinさんありがとう）自分で何番か対局してみた後、このシリーズの様々な登場人物はたいへんなものなのだという思いが大きくなりさえした。実際、将棋って難しい。みかけよりも、本当に、はるかに難しい。駒はどこからともなく現れるし、自分の守備の隙はどんどん作られてしまうし、ひどい失敗をしたくなければ、それらすべてのことに注意を払わねばならないんだ。前回のエピソードの紫音と沙織の対局について、たった一手のことで、一局の将棋の局面全体をひっくり返すようなことが起きてしまうということを実感をもって想像できるようになった。）

　このレビュー主が、ハム将棋を知ったのは、第７話のレビューを書いたときに、そのコメント欄におそらく日本人の将棋ファンで「しおんの王」のファンの方から追伸として「ハム将棋をやってみたら」という英語のコメントがはいったのがきっかけになっている。以下がそのコメント部の引用。

Star Crossed Anime Blog :: Shion no Ou - 07 :: November :: 2007

Shion no ou is 2 cours anime.
A total of eight volumes of the DVD are released.
there is one episode in DVD vol.1,and from DVD vol.2 three episodes in.
I think there are total 22 episodes.

I’m sorry if you cannot understand in my poor English.

P.S.
Why don’t you play shogi?
Hamu shogi(following URL) is FLASH shogi game for beginners.
http://hozo.hp.infoseek.co.jp/shogi/

Comment by DAIJIN ― November 28, 2007 @ 7:00

　「しおんの王」を見て英語で書かれたレビューを日本人の方が見て、ハム将棋の URL をコメント欄に書き込み、レビュー主がハム将棋で対局をしてみて、将棋の難しさに気付き、アニメの登場人物に対する思いが変化したという感想をまたブログに綴る。それを読んだ海外の読者が、ハム将棋を試してみる。これは、間違いなく、インターネットを介して将棋という文化が海外伝播していく最前線のひとこまである。上記コメントにある、「しおんの王」が１クールではなく２クールという情報が本当であってほしい。

ブラジル将棋連盟の発表を伝えるサンパウロ新聞

　ブラジルの日系紙サンパウロ新聞の１１月３０日付けの記事の伝えるところでは、

安恵照剛八段ら来伯　日本将棋連盟派遣百周年祝し将棋振興に

　ブラジル将棋連盟は二十五日、来年の日本人移民百周年記念祭の一環として日本将棋連盟（米長邦雄会長）にプロ棋士の派遣を要請していたが、安恵照剛八段、石川陽生七段の来伯がほぼ決定、と発表した。

とのこと。日本将棋連盟のウェブ上では、今のところこの件に関する情報はないようだ。