表題の本を昨日読んだ。「はじめに」にあるが、「研究テーマとして取り組んでいる「アニメ文化外交」関連講演で、ここ一年間ほどで一一ヵ国一五都市を回ってきた。若者を中心とした3000人ほどの前でアニメについて話してきただろうか。そのなかの一部の若者たちとは講演以外の場所でも熱く語り合ってきた」「この世界での経験を踏まえてなによりも思ったことは、海外の若者が日本のアニメをどう受け止め、彼らの人生にどんな影響を与えているかを、私自身も含め知らなさすぎたのではないだろうか」という足で稼いだ経験とそれにもとづく問題意識で書かれた本書は抜群に面白かった。文章中の「アニメ」を頭の中で「将棋」に置き換えて読んでみると、将棋の海外伝播がアニメに比べてどこまでが同じで、どこがまだまだ足りないのかよくわかる。
本文中で将棋が出てくる箇所がある。少し抜粋。
スペイン各地にアニメ・マンガ保護連盟(通称ADAM)なる組織が存在し、日本のアニメやマンガの社会的地位を上げる活動を行っているという話を、スペイン大使館で「オタク外交官」と現地の若者たちに呼ばれ、親しまれている山田彰公使(役職は当時)に聞いた。
聞けば、山田さんが今日、そのメンバーの一部に将棋を教えに行くというではないか。当初予定には入っていなかったが、同行させていただき、彼らに講演をさせてもうらう時間を作ってもらうことにした。山田さんと彼らの信頼関係はとても厚いのだ。こちらもプロジェクタさえあれば、どこでも即席の講演は可能な態勢は整えてある。文化外交に機動性は必須。いつでもどこでもそれができなければ、外交とはいえない気がしている。
(中略)
山田さんは、将棋の普及にもとても熱心で、彼らに指導もしている。二ヶ月前に始めたという男子と一局手合わせをすることになった。じつは将棋をするのは二十数年ぶり。うわ、負けたりしてと思いつつ対局し、辛勝したが、きっと次に来たときは完敗だろう。いっしょにアニメを見たり、作品の話をしたり、将棋を指したり。こういうことは、人と人の距離を一気に縮めていく。
これは、櫻井氏がスペインを訪れたときのエピソードである。102ページにはその様子の写真も載っている。
これは、筆者の勘にすぎないが、「アニメ文化外交」は、いろいろな分野で参照されるべき文献になる。その本に、将棋を海外で指している人がいること、また、引用しなかったが NARUTO のシカマルというキャラクターが海外での将棋の認知に寄与していることなどが書かれているのは、将棋界にとっては非常に大きなことだと思う。
なお、山田氏のスペインでの将棋普及活動については、以下で読むことができる。
時間を見つけては将棋講座をやっています
昨年に引き続き餅つき大会で将棋コーナー
芽生えてきたスペインの将棋
スペインでの普及をみつめて
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