図書館に行って、「レジャー白書2008」に記載されているここ10年間の日本全国の将棋参加人口の推移を入手してきた。この10年間9年間の推移を記してみる(単位は万人)。
- 970(平成11年)
- 1020(平成12年)
- 1030(平成13年)
- 910(平成14年)
- 900(平成15年)
- 840(平成16年)
- 710(平成17年)
- 770(平成18年)
- 660(平成19年)
レジャー白書上の将棋の参加人口の低減傾向は、平成17年の参加人口 710 万人を底にして下げ止まったかに筆者には見えていたが、平成19年の参加人口は660万人と初の700万人割れの数字になり、底割れをしてしまった。この数字はどのように解釈すればよいだろうか。それには、平成18年と19年の将棋界の出来事を思い出してみるのがひとつの手ではないかと思う。
勝手に将棋トピックスの独断で選ぶ2006年の将棋界十大ニュースによれば、平成18年の十大ニュースは
- 第1位:名人戦問題は毎日・朝日の共催で決着
- 第2位:女流棋士会が独立へ
- 第3位:プロ・三段リーグ編入制度の創設
- 第4位:将棋博物館が閉館
- 第5位:糸谷哲郎四段の活躍
- 第6位:瀬川晶司四段の話題
- 第7位:コンピュータ将棋の活躍
- 第8位:「大和証券杯ネット将棋棋戦」創設
- 第9位:将棋倶楽部24が日本将棋連盟傘下に
- 第10位:武者野vs米長訴訟が和解
となっている。この前年の2005年には瀬川四段の編入試験が行なわれており、4月1日付けで瀬川四段が誕生したのが2006年である。この年は、フリーソフトのBonanza が世界コンピュータ将棋選手権に初参加で並み居る商用ソフトをおさえて初優勝。アマ竜王戦に特別枠として初めてコンピュータソフトが参戦した年であった。
平成19年は、勝手に将棋トピックスでは年末に十大ニュースの記事が書かれなかったので、筆者が思い返したニュースだが、以下のようなことがあった年であった。
- 女流棋士会が分裂。LPSAが独立
- 渡辺竜王対 Bonanza 戦。これはNHK BS で特集番組が作られた
- 朝日新聞社、毎日新聞社から、「普及協力金」が合計で1億1200万円この年から向こう5年間毎年日本将棋連盟に対して支払われるようになる。
- 『ハチワンダイバー』はニこ神が登場する2巻が発売され、ブームに。NHK BSの「マンガノゲンバ」で取り上げられ、宝島社「このマンガがすごい! 2008」オトコ編1位、「このマンガを読め! 2008」で2位など高い評価を得る。
- 『しおんの王』が秋よりフジテレビ系列で2クールのアニメ化
- 『3月のライオン』連載開始。
- 森内18世名人資格者誕生。
- 前年放送のNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀 棋士 羽生善治の仕事 直感は経験で磨く」がDVD 化。
- 中学生女流棋士活躍でブーム。
- ニコニコ動画などで、NHK 杯の羽生 vs 中川戦の大逆転が大きなアクセスを集める
- 棋士総会で理事選。米長会長留任。
こうやってながめてみると、2007(平成19)年は、マンガ界からの強力な追い風が吹いたほか、久しぶりの永世名人資格者誕生、初のプロ棋士タイトルホルダー対コンピュータソフトのスポンサーつきの平手戦、そして、何より、真水で1億1200万円の「普及協力金」が使えるようになった最初の年であった。にもかかわらず、「レジャー白書」上の平成19年の将棋参加人口は平成18年の水準を維持できないどころか、最低値更新である。これはどう考えたらよいのであろうか。瀬川さんブームなどで、平成17年の710万人から平成18年に770万人まで戻した参加人口だが、名人戦契約問題、女流独立問題での将棋界のイメージ低下のダメージがあまりにも大きかったという解釈をするしかないと筆者は思うがどうであろうか。また、「レジャー白書」上の定義で、ネットで対局したのが参加人口に含まれるのか、含まれないのか、そのあたりについても確認をしておく必要があると思われる。
「レジャー白書」の数字は、世の中一般が将棋がその他のレジャー項目に比べてどの程度のものかを調べるときにまず最初に参照されるデータである。その参加人口の数字が底割れしている、ということに対して、もっと正面から向き合うことが将棋界としては必要なのではないのだろうか。
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