6月末から7月上旬にかけ米国フィラデルフィアで行われたチェスのワールドオープンに、森内名人、羽生三冠が参加していたのを知った。現地でインタビューが行われ、羽生三冠が英語で受け答えをしている。おそらく、将棋のトッププロの英語での肉声がインターネット上で誰でも聞けるようになったのは史上初のことで、将棋界にとっては歴史的な出来事といってよいと考える。そのインタビューの内容について面白いと思ったことなどを書き留めておきたい。
まず、インタビュアーの「将棋とチェスの似ている点は?」の質問に対する答えで、相違点として将棋は持ち駒ルールがあることを羽生三冠が答えているのだが、その最後のほうで、「クレイジーハウスのようなものです」という例えを持ち出している点。クレージーハウスはチェスのバリアントのひとつで、持ち駒ルールを導入したもので、これが出現したことにより、「将棋は世界唯一の持ち駒ルールがあるチェス・将棋類」とはいえなくなっている(厳密に言うと、禽将棋、5五将棋があるので、クレージーハウスが出なくてもそうは言えない)のを踏まえている点。羽生三冠は、チェスだけでなく、チェスのバリアントにも知識があることがここでわかる。
続いてインタビュアーの「どうやって将棋のチャンピオンになるのですか」という質問に対する答え方。羽生三冠は、「10代のときに将棋スクールにはいって、26歳までにプロの4段になってはじめて日本将棋連盟からプロとして認められ、C2から1Aまでの5クラスがあり、10人のAを勝ち抜いた者と、名人との決定戦でチャンピオンが決められる」と答えた。
ここで面白いと思ったのは2点。ひとつは、将棋のチャンピオンは竜王ではなく名人と答えた点。もうひとつは、プロになるために将棋スクール(奨励会のこと)にはいり、一定の年齢までに4段になることが必要なことは説明したが、プロになるためには他のプロの弟子になることが必要なことは説明しなかった点である。
最後は、「チェスで達成したいゴールはあるか」という問いに対する答え。羽生三冠は若干質問とはかみ合ってないような気がするが「いつもチェスのトーナメントを楽しんでいます。チェスのトーナメントのよいところは、アマとプロとの壁がないことで、もし運がよければ、非常にレベルの高いグランドマスターとも対局することができます。そういうところが国際大会の楽しみなところです。」と答えた。羽生三冠が、将棋についても同様な大会が望ましいと考えているのかどうか、非常に興味深いところだ。
管理人さま
羽生三冠のインタビュー、とても興味深く聞かせていただきました。
当ブログにて、7月29日-30日の全英将棋大会の様子をレポートしましたのでご覧になっていただければ幸いです。
それでは、失礼いたします。
投稿情報: ukdiary | 2006年7 月31日 (月) 06:15
ukdiary さま
おひさしぶりです。忙しい留学生活の貴重な時間を割いて全英将棋大会のレポートありがとうございます。キプロスから参加というのは驚きました。
羽生三冠のインタビューについては、「勝手に将棋トピックス」さんのところで全文テキスト化が進みました↓
http://d.hatena.ne.jp/mozuyama/20060723
投稿情報: takodori | 2006年7 月31日 (月) 15:19