先週のネタだが、日刊スポーツ7/19付けの赤塚辰浩記者の記事で、20代~30代の入門者、初心者を対象にした囲碁の普及プロジェクト「IGO AMIGO」が着実な歩みを進めていることを知った。
IGO AMIGO のウェブページをぜひ見て欲しい。そこには、20~30代をターゲットに絞り込んだ様々な工夫が見られる。以下、筆者が唸ったことを箇条書きにしたい。
*コピーの訴求力の強さ --- 「21世紀の囲碁「再発見」プロジェクト」「囲碁やろうぜ!」など。
*梅沢ブランドの最大限の利用 --- IGO AMIGO がどのような主体のプロジェクトなのかの情報が不明のまま突っ走る力技が凄い。「IGO AMIGOとは」のページに は「運営メンバー紹介」へのリンクがあるが本日現在工事中のままである。このページでわかることは梅沢五段が代表者であることと、ターゲットに訴求するためには、顔文字入りのメッセージがいいと判断しているらしいことだけである。日本棋院自体がこのプロジェクトにどのように関係しているかは、ワークショップの会場を提供していること以外は不明である。
*感覚的なミッションステートメント --- 「素敵な出会いと、潤いのある人生を」というビジョンを見た瞬間、その突き抜けぶりに呆然となった。エクスクラメーションマーク(!)の多用も理念を語るページとしては異彩を放っている。しかし、一行一行が簡潔で力強く、印象に残る。
*見ていて楽しくなる、微笑ましくなる写真の多用 --- 「ワークショップ」「著名人からのメッセージ」のページに顕著。ビジュアルは強い。
*囲碁のルールの説明は皆無 --- 「IGO AMIGOとは」のページの最後に「今後、WEBを中心にみなさんに囲碁に対する興味を持ってもらうためのコンテンツの発信」とあるが、ルールの説明は興味を持ってもらってからの問題のためか皆無。興味を持ってもらうまでの段階ではルールの説明など邪魔で、トリビアネタ、過去のワークショップの模様、著名人からのメッセージなどの方が有効との判断があると思われること。
*社交の道具としての懇親会がセットのワークショップ --- 単に囲碁の打ち方を習得する会ではなく、その後の懇親会が売りになっている。囲碁を通じて友達が増える、というアプローチは特に20代~30代に有効と思われる。
*ネット時代のメディアミックス --- 紙媒体だけではなく、梅沢五段のブログ、大手SNS内の「ゆかりとゆかいな仲間達」コミュニテイ(現在は閉鎖)の有機的、横断的活用。また、ワークショップ参加者がブログや大手SNSで日記を書き、新しいワークショップ参加者を促す例が見られ、普通の人が情報発信者になれるネット時代にマッチした普及活動の展開が見られる。
日刊スポーツの記事には、ワークショップ参加者が「初段を獲得すれば卒業。今度はスタッフとして会を運営したり、囲碁を教える側に回る。サークル活動としてしっかり回転している」とある。ここでの疑問は、初段というのは、日本棋院公認のアマ初段なのかという点と、もしそうであるならば、「囲碁を教える側に回る」ことと日本棋院の「普及囲碁指導員」制度との関係はどうなっているのかである。このあたりをはっきりさせるよりも、とにかく、真空地帯といわれる世代へアプローチすることを梅沢五段は優先させたようにも思える。
将棋の海外普及を考える立場からしても、ルールに入る前に訴求すべき点が多々あり、それが効果を上げている IGO AMIGO の実例は大いに刺激になるものである。
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