chessgames.comを読んでいての追記。このサイトは将棋を世界に普及していく上で非常に参考になるつくりになっているので、今日だけでなく、折に触れてもっと詳しく書いてみたい。
同サイトのFAQに、How can I learn to play stronger chess? という項目がある。チェスが強くなるにはどういうふうに勉強すればよいか、という質問だ。こたえは6か条にまとめられている。それらを紹介しながら、日本人以外の方が将棋に上達する場合にも適用できるかどうかを考察してみよう。
1, Play often, and play against opponents who are good enough to beat you at least half of the time. You can do this at a local chess club, or on the internet.
まず1つめ。「対局する際、対戦相手の少なくとも半分以上の相手は自分より強い人にしなさい」と勧めている。世界各地の将棋愛好家にとって、将棋倶楽部24(英語ページ)、JavaShogi(英語ページ)、BrainKing.com、ThaiBG.comなどで将棋が指せるようになったのは福音である。それらを使えば、海外に居ながらにして、自分より強い相手との対局ができる。
2, Review games of great players. That's where Chessgames.com can help! When reviewing a game, before you look at the next move, try to guess what the GM played.
2つめは「偉大なプレーヤーの指したゲームをレビューせよ」「その際、次の手を考えながらレビューせよ」。同サイトには、百万局以上の棋譜がデータベース化されており、ユーザーは自分の学びたい棋譜を様々な条件で選んでレビューすることができる。将棋の場合、棋譜の数はまだまだ少ないが、Reijer Grimbergen's Shogi Page で1997年以降のタイトル戦について解説付きの棋譜を見ることができるようになっているし、また、将棋を世界に広める会が戦法別のインデックスを作っていて、自分の好みの戦法の棋譜を選び出せるようになっている。
3, Read books. The greatest chessplayers of all time have written clear and precise guides for playing strong chess.
「本を読め」が3つめ。これも英語で出版されているチェスの本や、日本における将棋技術書の出版点数にははるかに及ばないが、英語では The Art of Shogi, Habu's Words, Shogi for Beginners, Shogi: Japan's game of strategy などがオンライン書店で購入可能である。また、ロシア語でも800ページ余りの将棋の技術書が購入できる。
4, Study endings. "The endgame is to chess what putting is to golf."
4つめ。「endgameを勉強せよ」。チェスのendgameと将棋の終盤はかなり異なるという説もあるが、終盤が強ければアマチュアの将棋ならばしばしば逆転勝ちが起り、勝率が上がるのは必定。海外でも詰将棋はかなり知られてもいるし、英語のウェブページもいくつかある。Tsumeshogi Challenge, RICOH shogi pagesのMating Problem, が定番。日本語がわからなくても図面があれば詰将棋は考えることができるので、詰将棋パラダイスの Try Everyday を海外で楽しんでいる人も知っている。なので、詰将棋の問題はかなりインターネット上で継続的に供給されているいってよい。ただし、必死問題は回答に解説が必要となってくるので外国語の文献はほとんどないのが現状。終盤の考え方については谷川九段の名著「光速の終盤術」がアマ有段者の翻訳家によって英訳が途中まで行われている(Lightning Speed Endgame Technique)。
5, After every game you review or play, try to determine the specific move where the loser went wrong.
5つめ。「試合後、もしくは棋譜のレビューの後、敗着を特定するようつとめよ」。これは海外の方もやっている。私としては、海外の方とのネット対局の終了後には、できるかぎり短い時間でも感想戦や、良い手、悪い手だと思う手を伝えるようにしている。
6, Attend local chess tournaments. There is something about the atmosphere of a tournament, when prizes and glory are on the line, that brings out the best in players of all levels.
6つめ。「地域のチェストーナメントに参加せよ」。まだまだ少ないが、世界の各地でトーナメントの開催の努力が続けられている。それらの開催団体が同地に進出している日本の企業などからスポンサーシップがもっと受けられるようになることが願いである。また、ネット上ではISCの努力で前回の将棋倶楽部名人戦に海外から数名がトーナメントに参加した。
このように見てくると、必死問題と地域で参加できるトーナメント以外は、量的にはまだまだとはいえ、質的にはかなりの水準のものが海外の人にも提供されていることがわかる。とはいえ、これらは中級者以上の人がより強くなろうとしたときに有用な情報や場が用意されているということで、駒の並び方をようやく覚えたばかりの人が、初級者、中級者に進んでいくための情報や場は、外国語で利用できるものはまだまだ圧倒的に不足している。このあたりの整備がさらなる将棋の海外普及のためには急がれる課題だろう。
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