たまたまだが、チェスの棋譜鑑賞ができるサイトの Chessgames.com に、Sacrifice Explorer という検索エンジンがあることを見つけた。同サイトのコンテンツは多くが無料で使えるのだが、Sacrifice Exploreは有料で年間22ドルでPremiun Membership を取得しないと使えないことになっている。将棋でいえば、羽生の5ニ銀とか、谷川の7七桂をキーワードにして検索すると、その棋譜が検索結果として返されるようなイメージだろうか。
どうもチェス界ではsacrificeに特別な思いを寄せる人が多いらしく、Sacrifice ExplorerのFAQのページによれば
We cannot resist the fascination of sacrifice, since a passion for sacrifices is part of a Chessplayer's nature.
--- Rudolf Spielmann
という言葉があるらしい。将棋でも、突き捨ての歩、単打の歩、終盤の詰め手順での捨て駒など、sacrificeと呼べる手筋が頻出する。また、価値の低い駒との交換もチェスではsacrificeと呼ぶらしく、飛車切り、角切りもsacrificeの一種とみなせるようである。
ならば、将棋はチェスと同じく、いや、チェス以上にsacrificeの巧拙が勝敗を分かつゲームであるというアピールをしていくことが海外の潜在的な将棋ファンであるチェスプレーヤーに対して有効なのではないだろうか。たとえば、今年の9月から10月にかけてアルゼンチンで行われた2005 FIDE Wrold Championship の記事(英文)を読むと以下のような表現にお目にかかることができる。
One of the many qualities that determine a good chess game is a surprising sacrifice. The San Luis event was full of excellent sacrifices. Let's look at a few from the first half of the tournament.
つまり、チェスのゲームの善し悪しをきめる要素のひとつは、びっくりするようなsacrificeがあるかどうかで、San Luisで行われたトーナメントでは素晴らしいsacrificeを度々みることができたのが良かったという記事なのだ。私はチェスはちょっとかじっただけなのでよくわからないが、チェスを愛好する人に、sacrificeに寄せる思いを機会があれば聞いてみたくなった。
ちなみにAmazon.comで調べて見ると、タイトルにsacrificeという言葉が使われているチェスの本はかなりあるようで、しかもユーザーレビューの星の数も四つ星、五つ星がついているものが多い。それに対し、将棋の本でタイトルに「捨」という文字が入っているものをKinokuniya BookWebの詳細検索で日本十進分類が796で、かつ、タイトルに「捨」という文字が使われている本を検索した結果はたったの一冊だけであった。
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