ひとつ前のエントリーに対するコメントで、以下のような貴重な示唆をいただいた。
Wikipedia:コンピュータチェスに「ハードの低性能化」の項があるように,アルゴリズム=ソフトウェア側の高効率化が進めば,nps(1秒間の局面評価量)は少なくて済むようになります.(以下略)
というわけで、Wikipedia のコンピュータチェスの「ハードの低性能化」の項目を読んでみたところ以下の文章を見つけた。
2009年8月には、スマートフォンのHTC Touch HDに搭載された「Pocket Fritz 4」がアルゼンチンで開催されたカテゴリー6(参加者のレーティング平均が2376以上2400以下。FIDEマスターの上位からIMの下位相当の水準)の大会に出場し10戦中9勝1分の戦績を収め、グランドマスター級の評価が与えられた。Pocket Fritz 4は1秒間に2万局面を読むが、ディープ・ブルーが1秒間に2億局面を読むのに比べると演算能力は1万分の1に過ぎず、ソフトの進化を印象づけるものとなった。
この大会について英語の記事をさがしたところ、Chessbase.com にレポートがあるのを見つけた。
Pocket Fritz 4 in the Mercosur Cup 2009
The global launch of Pocket Fritz 4, based on the Hiarcs 13.0 chess engine, could not have been more auspicious. In this category seven tournament the program, running on a handheld Pocket PC, scored a stunning 9.5/10 points, with an Elo performance of 2938. The program is scheduled to be released in October 2009 -- but you can order Pocket Fritz 3.0 for EUR49.99 today.
上記リンクの記事に、全棋譜をボード上で再現できるページへのリンクがある。勝敗表も貼ってみたが、確かに9勝1引き分けである。Chessbase.com の英文では elo レーティング2938相当とのことで、これはグランドマスターレベルの強さであるらしい。
ただ、Pocket Fritz 4の1秒あたりに評価する局面数が2万局面というのは、Wikipedia の日本語と英語以外では掲示板などがあるだけで、筆者には確たるソースは見つけられなかった。ともあれ、2009年当時のスマートフォーンでは数十万局面を一秒で読むのは無理だっただろうか。
2007年の渡辺 vs Bonanza 戦での Bonanza は一秒に400万局面、そして今回は一秒間に1800万手を読んだとのことだが、仮に上の数字が本当だとして、ソフトウェアが洗練・進歩していけば将棋の場合ももっと桁違いに少ない、一秒あたり数万回の局面評価数でプロ棋士相当の強さが実現できるようになるのだろうか。正月の米長永世棋聖の講演ではクローズアップ現代が取材に入っているとのことだったらしいが、仮に番組ができるなら、一秒間に1800万手読むというのはあまり強調しないでほしいなと思う。
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