梅田望夫氏の棋聖戦第1局の観戦記を読んで、なんとなく既視感を覚えていたのだが、棋聖戦ウェブ観戦記を補足する(2) 割れる大局観を今朝読んでいてその正体に思い当たった。ある局面についてトップ棋士の見解を比較するという方法は、島九段の「読みの技法」、鈴木宏彦氏の「イメージと読みの将棋観」で採用されていたものであった。それを、静的な局面図ではなく、リアルタイムに進行する将棋の局面局面でトップ棋士同士が、「朝まで生テレビ」よろしく控え室でトークバトルを繰り広げている(筆者はその場面を見たわけではないが、脳内の想像ではそうなる)のを読ませてしまうのだから面白いに決まっている。
ただ、棋書ミシュランの「読みの技法」のレビューを読み直してみてはっとしたことがある。
読みの技法 @将棋 棋書ミシュラン!
棋書史上もっとも評価の高いものの一つであるが、かなり難しい内容なので有段者以上にだけオススメする。わたしは24三級の時には半分以上意味が分からなかったが、初段になってから読み直したら八割方は理解できた。(2002,2005Aug20改訂)
果たして、80期棋聖戦第一局の79手目▲4五銀の一手前の局面でそのかわりに
79手目▲4五銀(上図)に代えて、▲2五桂△2四銀上▲1三桂成△同銀▲4五銀という藤井九段の指摘があり、両対局者とも納得していました。
と棋聖戦中継 Plus にはあり、また、上記の梅田氏のブログのエントリーにも、
「79手目▲4五銀(上図)に代えて、▲2五桂△2四銀上▲1三桂成△同銀▲4五銀という藤井九段の指摘」の通りに推移すれば先手の完勝だった。(両対局者この手順には全く気付いておらず、指摘に納得)
とあるのだが、果たして、持ち駒の桂馬をわざわざ打って、それをすぐに捨てて(端のと交換をするという駒損の順を選んで)から同じように▲4五銀と出て先手が完勝だというのは、詳しい説明がないと級位者は、両対局者のようには納得できず、半知半解のままに置かれている状態なのではないかと想像する(筆者自身は、一応有段者であるので、なるほどそう指すものか、と納得はした。ただ「完勝」というのにはちょっとびっくりしている)。
リアルタイム観戦記でそこまでの解説を望むのは酷だろうか。しかし、多分、あの将棋の一番面白いところは、上記の局面での機微だったので、その部分を抽出したのは殊勲甲であるが、そこについての「5級向け解説」が実は一番必要だったことで、それは、結局なされなかったなあ、とも思っている。
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