普段は公式戦のことについてはここでは書かないことにしているが、世紀の一戦であるので、少しだけ触れることにする。
渡辺竜王が第6局と同じ出だしから羽生名人の変化に対し、26手目3三銀という二枚目カード(新手)を切ってきた。第6局の34手目3一玉で切り札を出し切ったのではなかったわけだ。防衛まであと2勝となったら出そうと温存していたのだろうか。だとしたら、やるものである。
対して、羽生名人側に返しの切り札はあるのだろうか。あると見たい。それは、封じ手が多分、9一とと香車を拾う手になるからだ。
梅田望夫氏の棋聖戦の観戦記、【棋聖戦・梅田望夫氏観戦記】(1)桂の佐藤棋聖、銀の羽生挑戦者 (1/5ページ) - MSN産経ニュース が出てから名人は銀の人、というイメージができあがっているが、筆者にとっては、名人は香の人なのである。ネット上では、日経の将棋王国にそのことを伝える記事が残っている。
歴史学、考古学…将棋に多彩なアプローチ・連歌や和算への影響注目
秋田工業高等専門学校の米長泰教授はTQC(全社的品質管理)手法を駆使して、現代棋士の棋風分析を進めてい る。棋譜から使用した駒の回数などデータを収集し、主成分分析などを繰り返すと、棋士の個性が明確に表されるという。その一例が羽生四冠王の棋風分析だ。 香車を多用、自玉から離れて戦うのが常勝スタイルだが、昨年の名人戦では谷川名人の得意ゾーンに近い「香歩少用」寄りで戦ったため、苦杯をなめたという。[1998年5月2日/日本経済新聞 朝刊]
今シリーズ、かつて多用していたはずの香車を取って攻めに使う場面が第6局まで名人には一度もなかった。封じ手が9一とだとすると、竜王戦の全7局を通じて初めて香車を手駒にすることになる。竜王の繰り出した二枚目の切り札に対して、名人が香車を持って、どのような返し技を見せるか、大いに気にしながら、大一番の行方を楽しみたい。
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