小宮日記で、シンプルで、重要な問題提起をいただいた。
「将棋のゲームプログラミング研究者の母数を増やすか」への反応 - 小宮日記
スポーツの世界だと柔道は世界的に普及してますが、剣道はそうでもないですよね?
これって、剣道に対して、欧米では「フェンシング」があるから普及しないと言えないですかね?(つく剣と切る剣という文化の違いもあるでしょうが、それを言うと、もともと柔道なんて文化は欧米にはない)
同じように「チェス」があるから「将棋」は普及しない。
囲碁は、それに対する似たものがないので、ちょうど「柔道」のような状態で普及してしまったのではないでしょうか?
この提起について、考える材料がたくさんある。取り留めなく箇条書きにしてみる。
- 剣道では1970年から
毎年3年毎に世界選手権が開催されている。昨年行われた台湾大会では、日本の男子団体は、準決勝でアメリカに敗れた。優勝したのは決勝でアメリカを破った韓国である。昨年の大会は44カ国、参加者586名であった。(参照:日本男子、13連覇ならず/世界剣道、米国に逆転負け―四国新聞社 | 世界剣道大会個人準優勝 古室可那子選手 1月5日金曜日教育長に表敬訪問) - 柔道の海外普及の功労者の嘉納治五郎氏の、英語を使った交渉力、政治力は日本人離れしていたと思われること。彼は、日本初の国際オリンピック委員であり、一柔道家という枠を超えた、破格の人であったと思われること。(参照:見物人の論理: 柔道の国際的地位は政治力によって築かれたのではなかったか。 |嘉納師範がIOC委員になったいきさつは?)
- 囲碁では、岩本薫氏の私財を投じた尋常でない普及活動が海外普及の礎にあったこと。”1975年にロンドンに囲碁会館を建設したが、3年ほどで経営不振で閉館。1986年に、所有していた囲碁サロン「薫和サロン」ビルを日本棋院に寄付し、それを売却した5億3千万円を資金として岩本囲碁振興基金を設立。1989年にはサンパウロに南米囲碁会館を建設、1992年にアムステルダムにヨーロッパ囲碁文化センター、1995年にシアトルとニューヨークに囲碁会館を建設するなど、世界各地での普及に尽くした。”と Wikipedia の氏の項目にはある。また、小林千寿氏、重野由紀氏など、プロ棋士で海外に居住しながら普及活動を行った(ている)人が囲碁界にはかなり前から存在している。
- アメリカンフットボールが盛んなアメリカで、似たようなスポーツであるサッカー、ラグビーの人気はなく、競技人口も少ないと思われている。だが、アメリカは、サッカーのワールドカップに過去5大会連続本戦出場を果たしているし、1987年から始まったラグビーのワールドカップには、全6回大会のうち5回本戦出場を果たしている。ワールドカップの本戦に出場するのは並大抵のことではないはずであるが、これはなぜか。
筆者は、嘉納治五郎級の人物が将棋界に現れ、岩本薫級の資金が将棋の海外普及に投じられて継続的に普及の努力が行われ、その上で将棋が海外に普及しないのであれば、「チェス」があるから「将棋」が普及しない、という仮説は正しいと証明されるのだと思っている。
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