最近、名人戦の局面が使われたコンテンツを2つ目にした。ひとつは一般人のもの、もうひとつは、プロの手になるものである。
まずは、一般人のもの。以前、脚付きの将棋盤が日本から届いてご満悦という海外将棋ファンのブログエントリーで、脚付きの盤が到着して喜んでいる米国人のブログを紹介したが、彼はさらにネット販売で駒台も購入し、品物が家に届いたのでその写真を披露するためのエントリーを10日におこしている。
上記リンクに、以前に買った盤駒と今回届いた駒台の写真が載っている。その盤面の局面は、ご本人が書いているが、2006年の森内名人対挑戦者谷川九段の名人戦第2局、ゴキゲン中飛車超急戦の局面である。駒台の上の駒が揃えられていないのが少し気にかからなくはないが、自分のブログで写真を公開するのに、わざわざ名人戦の局面を並べて撮ってくれるなんて、なかなかの将棋への傾倒ぶりである。
続いては、プロの手になるもの。それは先週のヤングアニマル第14号で始まった、羽海野チカ氏の「3月のライオン」で、筆者も既視感のある局面だなとは思ったが、具体的に誰と誰の対戦した将棋かまでは思い出せなかった。が本日、以下の3つのブログエントリーを読んで最後にはたと膝を打った。
『3月のライオン』盤面チェック(三軒茶屋 別館)
3月のライオン Chapter.1 桐山零 (おかるとのヲタク日記)
告知諸々 (義七郎武藏國日記)
上記で、検証されたとおり、紛うことなく、1975年に行われた中原名人と大内八段(当時)との間の名人戦第8局(途中持将棋引き分けがあったため、第8局まで行われた)の途中図と投了図が使われている。初回の主人公、桐山零の人物設定は、17歳、C級1組のプロ棋士である。その将棋に、この局面が使われたということは、主人公が、五段ながら名人になりうる器であることを示唆している、とみるのが筆者は普通ではないかと思う。そう思って17歳、C級1組という設定を改めて考えると、これから零が毎年順調に昇段して名人になると仮定すると、彼が名人になるのは最短で21歳、つまり、今の制度になってからの谷川名人の最年少記録に並ぶ、という設定になっているような気がして仕方がないのであるが、うがちすぎだろうか。
羽海野チカ氏の前作「ハチミツとクローバー」は、外国語でもコミックが発売されている。「3月のライオン」も外国語訳される shogi だけでなく、meijin という言葉が外国に発信されることになることを今から大いに期待したい。
(以下 7/20 追記)
「3月のライオン Chapter. 1 で零が着替えをするシーンのページのカレンダーで6月8日に丸印がつけてあるコマがある。使われている局面がタイプトリップしているので、もしやと思い、昔の同じ日付に将棋界で大きな出来事がなかったかどうか調べてみた。びっくりした。1972年の6月8日は、中原新名人が誕生した日であった。
初めまして。いつも興味深く拝見しています。TBを頂きましたのでお返事をば。
第34期名人戦08局へのリンク自体は余り関心しませんが、Chess文化圏の方々には違和感がないでしょうから難しい所です。
とは言え、今回も「3月のライオン Chapter.1 桐山零」へのリンク等興味深い話題です。「棋譜選択は名人襲位への暗示」とのご分析も、一理あるでしょう。
今後海外ファンの知識欲にどう答えて行くかが問題になるでしょうが、その辺りをTadadoriさんのエントリーから汲み取って行きたく思います。
投稿情報: 窪田義行 | 2007年7 月18日 (水) 00:31
羽海野チカさんは、森博嗣先生のホームページのイラストを描かれていたし、文庫本のイラストや表紙も担当されていたので知ってはいましたが、ハチクロの作者とはつながっていませんでした。ハチクロ派読まなかったもので。森先生の文庫本の解説を先崎先生もかかれていたから、あようやくつながってきました。
投稿情報: madi | 2007年7 月18日 (水) 06:22
> 窪田義行さま
微妙な点も含めて、コメントありがとうございます。
ここは、いわゆる匿名ブログの形で運営をしておりますが、利用しているブログサービスの Typepad は当然わたしの氏名・住所を把握しております。関心(感心?)しないとされるリンクについては、関係法令(いわゆるプロバイダ責任法、など)に基づいて、削除要請等が来る可能性については、常に考えております、とお答えさせていただきます。「難しい所です」という点には同意です。
違和感がないのは、Chess 文化圏だけではなく、日本以外の囲碁文化圏も同じようなことになっていると認識しています。もう少し広げて、日本の将棋と囲碁以外の Board game 文化圏全体ではどうか、という見方もできるのでは、とも思います(とはいえ、すべての Boardgame に精通してはいませんし、できるわけもないのですが)。
海外ファンの知識欲にどう答えて行くか、という問題を認識いただけただけでも、書いてきた甲斐があります。解決には、立ち位置の違いで枝葉末節でいろいろと相違点は出てくるでしょうが、大きな方向性での違いはほとんどないはずと思っています。
> madi さま
貴重な情報をありがとうございます。気がつきませんでした。ちょっと調べたら先崎八段の「先崎学の実況!盤外戦」で森氏と対談もしているのがわかりましたので、申し添えます。
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2754029
投稿情報: takodori | 2007年7 月18日 (水) 11:16