「将棋世界」10月号に作家の吉村達也氏が「新聞で伝えられなかった名人戦問題の一側面」という文章を寄稿している。その中で、気になるフレーズがあった。
読売と朝日両紙の誇る巨大部数が、受動的な将棋とのふれあいをきっかけとした将棋ファンの増加や、棋譜を多くの人々の目にふれさせるという点で、大きな魅力になっていることも否定はできない。
確かに、将棋に関心がない人にも、新聞に囲碁・将棋欄があるのが目に入ったことがある人はかなりいるだろう。その意味で、氏の指摘は正しい。ただ、それを言うならば、囲碁・将棋欄が新聞のどの面に現在あるのかについても言及してほしかった。
筆者が子どものころの1970年代、新聞将棋はスポーツ面に載っていた。筆者の個人的体験からすると、子どもが新聞を読むのは、1面のコラム、テレビ・ラジオ面と、スポーツ面が圧倒的に多いのではないかと思う。いや、大人だって実のところ最大公約数はそういうものかもしれない。この仮説が正しいとすると、囲碁・将棋欄は何ページもある新聞の中で最も読まれる面にあったことになり、吉村氏のいう「受動的な将棋とのふれあい」の機会も多かったと思われる。
ところが、多分1980年代か90年代に、すべての全国紙の囲碁・将棋欄はスポーツ面以外のページに移ってしまった(地方紙については調べていない)。株式のページに囲碁・将棋欄が載っている新聞もある。筆者の体験や子どものころの友人との会話からすると、株式のページを積極的に読む子どもはかなり少ないのではないかと思う。つまり、部数の多い新聞に、ブランド力のある棋戦が載ることは、確かに「受動的な将棋とのふれあい」の機会を増すことは間違いないが、子どもへの「受動的なふれあい」の機会を増やすかというと、現在の囲碁・将棋欄の載っているページが変わらないとすれば、効果は限定的といわざるを得ない。
他方、吉村氏の寄稿は、海外の方の「受動的な将棋とのふれあい」の機会について考えるきっかけを与えてくれた。海外の将棋ファンは、自分の国に将棋団体がある場合はその団体の機関紙と、インターネットを通じて将棋の情報を手に入れている。検索エンジンでキーワードを試行錯誤させながら、得たい情報を能動的にさがす人ならば、それなりに豊かな将棋情報が海外にいても手に入る。だが、「受動的な将棋とのふれあい」の機会はほとんどない。
海外で将棋に関心の無かった人が受動的に将棋情報にふれる機会は、棋士がチェスや、シャンチーなどの国際大会でよい成績を取ったのが、その世界のメディアで、「日本の将棋のプロがXX大会でよい成績をおさめた」というニュースになって流れるときや、コンピュータとプロの戦いが英語その他の言語でニュースになって流れるとき、また、JAPAN EXPO などの日本を紹介する展示会で、たまたま将棋のブースが出ていたとき、総合的なゲームサイトに将棋が加えられ、それまで将棋を知らなかったユーザーの目に shogi という文字がメニューで否応無く目にはいってくるとき、などであり、まだまだその数は日本に比べれば圧倒的に少ないといってよい。
その意味で、Shogi・Super-Brain研究会の成果の発表が外国語でも行われれば、様々な外国語メディアがフォローすることが予想され、海外でも「受動的な将棋とのふれあい」の機会が増加することになる。ぜひ、日本だけでなく、海外のメディアにも成果を発表していってほしい。
現状、毎日の場合、日によって
囲碁・将棋欄の掲載場所が変り
大変読みにくいです。
いろいろな読者層に受動的な購読を
狙っているものとはとても思えず、
とりあえず空いているとこへと
虐げられている感じです。
投稿情報: kubota | 2006年9 月 6日 (水) 15:27
kubotaさん
曜日によって欄の位置が固定されているのかもしれませんが、昔のほうがわかりやすかったと思います。
投稿情報: takodori | 2006年9 月 7日 (木) 00:00
「アタックナンバー1」の70年代ヨーロッパでの放映が現在の女子バレーの日本凋落の原因をつくったといわれています。アニメによってその世界をめざすひとはおおく、その影響は20年後にでます。
将棋の場合は舞台劇の「王将」の影響もおおきかったのでしょうが。
「ヒカルの碁」がある囲碁とくらべて「月下の棋士」だけではちと不利ですね。
知的パズルとしての詰将棋のすごさがわかるのにはある程度棋力が必要なのもネックですねえ。
投稿情報: madi | 2006年9 月17日 (日) 21:05
ほう、「アタックナンバー1」でそんな影響があったとは知りませんでした。海外では「月下の棋士」よりも「NARUTO」のほうが将棋に関しては影響が大きいと感じています。
投稿情報: takodori | 2006年9 月18日 (月) 11:52
アタックナンバー1の影響力をあなどってはいけません。女子があたりまえに高校に進学する状況つくりにヨーロッパでかなり影響を与えています。女子の高校進学率は日本は世界的にみてもトップクラスだったのです。
中国でのバレー普及はまた別のドラマが影響しています。
投稿情報: madi | 2006年9 月18日 (月) 21:23