フィナンシャルジャパン11月号の”定跡破り 名人戦争奪「仁義無き戦い」”を読んだ。
筆者は名人戦問題については、4月14日に「結局、アマ対プロ、女流対プロの公式戦が減るのではないか」と当欄で書いたが、朝日オープンについてはまだ実質的に進展がないのでそれ以上書くべきことはない。筆者自身は、名人戦問題で急遽出てきた「普及協力金」なるお金のなにがしかが将棋の海外普及のために使われるのかどうかが一番興味があるところで、第三者の当時者間の契約のもつれに対しては、すべてが決着するまでは何をコメントしても詮無いことだと思っている(とはいえ、インサイドストーリーを追うのは嫌いではない。それはそれで面白味のあることと思う)。
というわけで、上記対談の中から、田中寅彦日本将棋連盟常務理事、二宮清純氏(スポーツジャーナリスト)の将棋を世界に広めることに関連した発言を拾ってみる。
<田中常務理事発言>
名人戦という将棋の伝統文化を日本のみならず世界に広めるにはどうすべきか、という本物の議論をしてもらいたい。
日本国内では(中略)これからますます人口は減っていきます。だから世界を相手にしなくちゃならない。
朝日だったら、海外で名人戦ができるかもしれない。
日本の世界に誇れる将棋文化に対し、「無礼」にならない発展を目指したいものです。
田中理事の発言からは、将棋を世界で普及をしていくのに今後何が必要かについて、名人戦を海外で開催する、という以外の具体的なアイデアは見つけられない。
<二宮氏発言>
「トヨタカップ名人戦」とか、「ソニーカップ名人戦」を考えるべき。将棋界には将棋を世界に普及させるというミッションもある。いずれは将棋のW杯というのも見てみたい気がします。
言葉がわからなくても、ルールさえ覚えたら誰でも将棋はできるし、日本の文化を世界に発信することもできる。日本文化を世界に伝播するのは国際的企業の社会的責任だと訴えるべきです。
世界にはチェスをはじめ、将棋のようなゲームがたくさんありますが、僕は将棋が一番面白いと思う。中国をはじめ海外に進出した企業が将棋をサポートすること、それ自体がメセナです。互いが互いを理解するうえで、将棋はこれ以上ない日本が誇る文化とも言えます。
それに対して、二宮氏の論旨は具体的で明快である。将棋の世界普及は「将棋界のミッション」であり、日本の多国籍企業、海外進出企業が将棋をサポートするようにすることがメセナであり、将棋の世界普及を支えることが国際的企業の社会的責任だと訴えていくことが(将棋界の、ないしは、日本将棋連盟の)やるべきことだと述べている。
田中常務理事は二宮氏の将棋の世界普及に関する論旨に対して全く異論がないように筆者には読めた。ならば、是非、理事会をその方向でまとめて具体的に動きを見せて欲しい。来期の順位戦が延期にならないように共催をまとめるのが優先度が高いのはもちろんだが、二宮氏の提言は重要なところを衝いていると思う。それが無駄に終わらないことを期待したい。
田中理事から、世界の普及の具体策がないような気がします。将棋連盟はお金をいただくところという意識がありましたが、改善されていることを望みます。
投稿情報: umagata | 2006年9 月26日 (火) 20:08
11月に「普及大綱」が発表されるようですから、それに注目です。
投稿情報: takodori | 2006年9 月27日 (水) 13:58