理化学研究所のプロ棋士とアマの脳の比較研究について今朝にかけて多くの日本語報道があった。
理化学研究所などは、将棋のプロ棋士が次の手を直観で選ぶ際に、脳の特定部位が活発化することを突き止めた。人間により近い人工知能の開発などに応用できる可能性があるという。研究成果は21日付の米科学誌サイエンスに掲載された。
将棋の羽生善治名人らプロ棋士が直観的に次の一手を選ぶ際、アマチュアにはない脳の神経回路の活動があることを、理化学研究所や富士通などのチームが突き とめた。この直観を導く回路は普通の人にもあるが、長年の訓練で上手に使えるようになると考えられる。21日の米科学誌サイエンスで発表する。
- 将棋のプロ棋士が「最善の一手」を直感的に見つける時に働く脳の部位を、理化学研究所脳科学総合研究センターなどのチームが世界で初めて特定した。アマ チュアには見られない現象で、プロならではの直感をこの部位が生み出しているらしい。21日付の米科学誌「サイエンス」に発表した。
将棋のプロ棋士が瞬時に盤面を見極め、次の一手を直観で決める際の脳の働きを、理化学研究所や富士通などの研究チームが明らかにした。脳の視覚に関連し た部位などの活動がアマチュアに比べて高まるという。人工知能や直観を持つロボットの開発などにつながる成果だ。21日付の米科学誌「サイエンス」(電子 版)に掲載される。
いずれの記事も、米誌の「サイエンス」に研究成果が掲載されることを報じている。調べたところ、「サイエンス」誌の電子版にアブストラクトが載っていた。
このほか、世界的な通信社大手のロイターやAFPなどで報じられている。記事の分量が多いのは、3番目の Cosmic.log のものである。
- Master chess players use hidden brain parts: study | Reuters
- AFP: Chess experts use brain differently than amateurs
- Cosmic Log - How your brain picks the best move
- Experts' Brains Work Differently Than Amateurs' - US News and World Report
- Researches identify brain part that helps professional shogi players make optimal next move - The Mainichi Daily News
- BBC News - Expert board game players utilise specific brain areas
このようにプロ棋士が協力した研究の成果が世界に発表されるのは喜ばしいことだ。ひとつ気がついたのは、どの英文報道も見出しには ”shogi” の文字がなく、ロイターやAFPは"chess"を使っていること。チェスの記事かと思って読み始めたら本文で "shogi" に出くわすという仕掛けになっている。世界の一般的な認識としては、"shogi"はまだまだ見出しとして使うにほどには広まっていないことを示しているといえよう。
今回の報道をきっかけにして、理化学研究所の「将棋棋士の直観の脳科学的研究-将棋プロジェクト」のウェブサイトを改めてみてみたが結構充実しているのに驚いた。英文のページもあるのが心強い。野月七段、西尾五段、佐藤和俊五段のプロジェクトエッセイなどプロ棋士が本プロジェクトにどのような期待をもっているのかがわかり興味深い。
- 第1回 棋士の思考 将棋棋士 野月浩貴 七段
- 第3回 将棋と脳 将棋棋士 西尾 明 五段
- 第5回 経験で育まれた知識と脳科学 将棋棋士 佐藤和俊 五段
お久し振りです。今日の第23期竜王襲位式は事情に依り参加出来ませんので、代わりに書き込みをば。
個人的には直観(直感)に関して、大脳皮質頭頂葉の楔前部と大脳基底核の尾状核の連動が紹介されるばかりで、伊籐正男BSI特別顧問チームがご提唱していらした【小脳仮説】への言及が存在せず気になります。
理化学研究所の公式発表は、参加03チームの内で田中啓治教授のそれにより行われた様にお見受けします。
【サイエンス】誌電子版での抜粋も同様でしょうから、海外の報道も準拠しているかも知れません。
とは言え、今後言及されるかを含む小脳仮説の扱い、その他海外版報道で国内版との格別な相違にお気付きであれば、ご指摘頂きたくお願いします。
個人的には、聞き取り調査に参加させて頂き伺った折りに、愛読の【銀河英雄外伝】で主人公・ユリアンが師父たるヤン提督との関係を小脳と大脳に準えた一節を想起し、以来興味深いですが……
投稿情報: 窪田義行 | 2011年1 月24日 (月) 11:36