「瀬川晶司はなぜプロ棋士になれたのか」(古田 靖著 河出書房新社)を読了。非常に読み応えがあった。ただひとつ難点を言えば、優れたノンフィクションの割りに、冗談が多過ぎるところであろうか(個人的にはそこが気に入っているのではあるが)。本日はエープリルフールでもあることだし、ほんの一部を紹介することにする。
その1
2ヶ月前、旧知の紀伊國屋書店の役員から、将棋連盟に対してある提案がなされた。理事会にかけてもらうべく、森下がその話を仲介した。ところが、しばらく経ってから各理事に聞いてみると、そんな話があったことすら知らないという。提案は、きちんとした企業からのものであり、連盟にとっても悪くない条件だった。なぜ理事会は検討すらしてくれないのであろう。あれこれ考えた結果、自分が理事になるしかないと決断した。
その2
このまま上げ続けるには、竜王戦の価値を高めてもらわなければならない。連盟はこれまで読売に対し、どんな貢献や努力をしてきたか。そして、今後どうするつもりなのか。これらを具体的に説明した文書を提出して欲しい。西條の上司はそう要望していた。
後日、渉外担当の幹部職員が大手町の読売新聞本社に文書を持参した。
「読売新聞社が竜王戦の契約金を上げてくれないと他者の契約金も上がらない。ぜひとも上げてほしい。」
理事名でそう書いてあった。
日本将棋連盟といえば、国際将棋フォーラムという国際的なイベントを既に3回も行っている組織力のある団体である。それだけのイベントを継続して行える実力のある団体の内情が上記のようなはずであるわけがない。折角のノンフィクションなのだから、著者は上記のような冗談にあまり紙幅を費やすべきではなく、もっともっと本当のこと、今まで誰も活字にしなかったこと、を書いてほしかったと思う。
古田氏の著書には、「アホウドリの糞でできた国 ナウル共和国物語」(共著)、「アスリートが育つ食卓」というものがあるらしい。いわゆる、将棋界で飯を食っているライターとは一線を画する方のようである。そういうフリーの立場だから書ける事もおそらくあるであろう。本書で終わらず、著者には、さらに将棋界を題材にしたものを書いてほしい。そう思っているのは私だけではないだろう。
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