昨日のNHK杯の羽生二冠対中川七段戦、万事休すかと思われた局面からの大逆転にはもちろん驚いたのだが、それを取り上げるブログの多さや、ニコニコ動画の再生回数、コメントの多さのほうにもっと驚いた。将棋に関するエントリーが多くなるのは、名人戦問題とか、女流の独立問題とか、Bonanza 対 渡辺竜王とか、何か人間同士の将棋の内容以外の部分でハプニングが起きたときがほとんどだったのを寂しく思っていた者としては、狐につままれたような気分である。
Yahoo!のブログ検索 や、Google の Blog Search の検索結果へのリンクを張ってみる。
キーワード「羽生 逆転」(Yahoo! ブログ検索)
キーワード「羽生 中川」(Google blog search)
今まで、Youtube や、ニコニコ動画で人気が出た動画将棋コンテンツは、容姿が特異なもの、解説中に告白(?)をしてしまったハプニング、ないしは、二歩などの反則がらみのものであって、将棋の内容そのものに直接触れたものではなかったと思う。ところが昨日から今日にかけて起きていることは、将棋の一番面白い終盤の部分がそのままニコニコ動画にアップされただけのいわば直球ど真ん中コンテンツが評価されて大人気を博しているという、まさに将棋界にとって今までになかった慶事ともいうべき現象である。もちろん役者が、千勝間近の羽生二冠、加藤九段に劣らず駒音が高い中川七段(広報担当理事でもある。昨日の逆転負けが広報上の大戦果になったのが因果といえば因果である)、そして、ネット上でも伝説が有名で最近の千敗が大きく話題となった加藤九段と、揃いも揃っていたという偶然が幸いしている部分はあるのだが。
将棋倶楽部24では、生で今行われている将棋にチャットでコメントを付けられる。おそらくプロが含まれている高段者の生の将棋をコメントでつつきながら見るという楽しみは、前世紀の昔からできたことだ。だが、対局者の表情を見ることはできなかった。たとえ中継録画であっても、一手ごとの対局者の表情や駒音、しぐさを見ながらのコメントが満載のニコニコ動画の昨日の大逆転の映像は、正直にいって将棋倶楽部24の道場の画面を見ているのよりもはるかに面白い。このへんに、今後の将棋普及にとっての重要なヒントがあるのではないかと思う。日本将棋連盟は、インターネット放送局を持つことをビジョンとしてあげていると思うが、局という箱を持つ事自体が目的になってしまっているのではないかという感じがしないでもない。誰に対して、どのようなコンテンツを発信するのか、また、それは双方向性を生かしたものにするのかなど、ソフト面でいろいろ考えなければいけないことはあるはずなのだが、それが今のところは見えてきていない。
日本語ができない者にとってニコニコ動画のユーザー登録の敷居が高すぎるのが惜しい。外国の人でニコニコ動画を楽しめるひとは少数だろう。いっそ、Google あたりが買収して Globalize してくれないか、などとも思う。
コメント