8日にニコ生で、【電王戦 直前特番】決戦6日前!米長邦雄永世棋聖が将棋電王戦を語る - ニコニコ生放送が放映された。米長永世棋聖とフリーアナウンサーの福山知沙氏によるトークショーの形で番組は進んだが、番組中に、森内名人、羽生二冠、谷川九段がそれぞれ別々に録画されたインタビューで14日に行われる電王戦についてコメントしていたのが目を引いた。現役の永世名人資格者3人全員が引退棋士とコンピューターの一戦に揃い踏みでコメントを出すことは異例のことで、それだけボンクラーズの強さを将棋界が真剣に受け止めていることが印象づけられるのに十分な出来事だったと思う。それぞれのコメントを紹介し、若干の感想を述べたい。
森内名人
最近ちょっとボンクラーズの将棋を何局か調べる機会があったんですけれども、以前のコンピュータに比べて非常に指し手が安定してきているというか、そういう感じがしますし、前は終盤の計算力、そして序盤の多大なデータを蓄積している、そういう強みがあったんですけれども、それに加えて中盤の強さも加わってきていて、なかなか手ごわいかなという印象はあるんですけれども、米長先生はあれだけの実績がある棋士ですし、往年の力を出すことができれば今回も大丈夫なのかなと思っています。米長先生がどういうような将棋を指すのか私も興味深く注目しております。
これまで、コンピュータ将棋についてコメントする棋士はたいていの場合が勝又六段で、今回の電王戦で遠山五段がニコ生の番組でボンクラーズの将棋倶楽部24での棋譜を解説したのが例外的だと思ったが、現役の名人が「最近ちょっとボンクラーズの将棋を何局か調べる機会があった」と述べているのは注目すべき発言である。また、その結果が「なかなか手ごわいかなという印象はある」になったのは今のボンクラーズの強さを率直に描写しているのではないかと思う。
羽生二冠
米長先生は基本的に今までの経験をいかすような、位とか厚みとかそういうのがいきるような展開にもっていきたいというのがあると思うので、最初の出だしのところから中盤の入り口くらいまでのところでどういう形になるかというのが一番の見所ではないかと思っています。
羽生二冠は米長永世棋聖の望む展開を予想しているだけである。が、「位とか厚みとかそういうのが生きるような展開」を、対コンピュータプログラム対策として羽生二冠自身が有力と考えているのかどうかが知れればより興味深かったと思う。
谷川九段
情報合戦になるとやはりコンピュータにはなかなか勝てないので、できるだけ早い段階で前例のない未知の局面に持ち込んでなおかつ局面の均衡が保たれている形にもっていって力将棋でねじり伏せるというそういう場面を見てみたいとは思っています。
現役の永世名人資格者の一人から「情報合戦になるとやはりコンピュータにはなかなか勝てない」という弱気な発言が出たのは驚いた。谷川九段のコメントは既にボンクラーズがプロをしのいでいるというようにも取ろうと思えば取れるコメントである。
上にリンクしたニコ生の番組を放映したニコニコ動画は、この3人のコメントを録画して電王戦6日前というタイミングにオンエアしたことで、既存の将棋メディアに比肩し得る、もしくはそれ以上の働きを示したと思う。
<追記>ニコニコ動画が本番のPVを作成したのを見つけたのでリンクを追加する。北浜七段、電通大教授の伊藤毅志氏などのコメントも見ることができる。
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