12月8日より中国の北京でチェス・ブリッジ・囲碁・ドラフト(チェッカー)・シャンチーの5種目で標記の大会を行っているスポーツアコードとはどんな団体かを調べてみた。これはなぜ調べたかというと、標記の大会に仮に種目として将棋が入るとしたらどのような手続必要かを知るためである。スポーツアコードの公式ウェブサイト(英語)と日本語のWikipediaの「スポーツアコード」の項目にリンクし、主に Wikipedia から引用し、適宜公式サイトから補って記述を進めていく。
スポーツアコード(SportAccord)、旧称GAISF(英:General Association of International Sports Federations、仏:Association Générale des Fédérations Internationales de Sports, AGFIS)は、国際オリンピック委員会 (IOC) に承認されているスポーツ団体である。様々なスポーツの国際スポーツ競技団体 (International Federation, IF) や、教育・科学・技術的な側面でスポーツに対して貢献している国際組織などが、世界のスポーツ保護、情報の共有、協力協調を目的に加盟している。ワールドゲームズの競技、種目はGAISFの加盟団体の統括する競技、種目のうちオリンピックで実施されていないものから選ばれる。1967年発足。本部はスイスのローザンヌにある。
上記の説明のような団体なのであるが、たとえば日本が発祥の地ないし中心的な役割を果たしている、または果たしていた国際競技団体でスポーツアコードに加盟している団体には上記Wikipediaによれば以下のようなものがある。
- 国際合気道連盟
- 国際囲碁連盟
- 世界空手道連盟
- 国際剣道連盟
- 国際柔術連盟
- 国際柔道連盟
- 国際相撲連盟
見ておわかりのように、すべて「国際~」「世界~」という冠がついている国際競技団体である。つまり、スポーツアコードは、国際競技団体をメンバーとする団体で、単独の国や地域の競技団体ではメンバーになれない。
また、いわゆるマインドスポーツとよばれる競技で、スポーツアコードに加盟している競技団体には次のようなものがある。
- 国際囲碁連盟
- 世界ブリッジ連盟
- 世界ドラフツ連盟
- 国際チェス連盟
というわけで、シャンチーの国際団体はまだスポーツアコードには未加盟のようだ。その段階で、現在北京で行われているスポーツアコード・ワールド・マインド・ゲームズの競技種目にシャンチーが選ばれているのはちょっと不思議である。なんらかの政治的な配慮が行われているのかもしれない。
日本語の Wikipedia には記述がないが、スポーツアコードの Full Membership を取るための条件には次のようなものがある。
Governance
- 非営利団体であること
- 透明性、会計の明朗さ、男女平等、差別を行わない、公平性の担保などを具備していること
- 総会が最高決定機関であり、役員選挙が行われること
Universarity
- 冬季競技の場合は、2大陸25カ国以上の加盟団体があること
- 夏季競技の場合は、4大陸40カ国以上の加盟団体があること
- 各国の加盟団体は、その国の唯一の統括競技団体であること
順序が後先になった感があるがスポーツアコードによる「スポーツ」の定義は、Definition Of Sportsのページにあり、次のようになっている。
The SportAccord definition of sport
- 競技の要素を有していること
- 生物に危害を及ぼさないこと
- 単一のサプライヤーによる道具設備に依存しないこと
- 競技部分が「運の要素」に左右されないこと
では、将棋も上記を満たせばスポーツアコードに加盟できるのかというと、そうではなく、いわゆるマインドスポーツと称される、主として身体能力を競わない頭脳競技に類する競技にはメンバーシップの申請手続きApplication Procedureに次のような条件がある。
- Applications from mind games will only be considered after consultation with the International Mind Sports Association.(マインドゲームからの加盟申請は、インターナショナルマインドスポーツアソシエーションの助言を受けたのちにのみ審査される)
つまり、将棋の場合は、「4大陸40カ国」を満たすだけではなく、インターナショナルマインドスポーツアソシエーションがうんといわなければ、将棋の国際団体が仮にできたとしてもスポーツアコードには加盟できないことになる。逆に言うと、インターナショナルマインドスポーツアソシエーションがOKを出せば、定義にある「単一のサプライヤーによる道具設備に依存しないこと」などについては配慮があるのかもしれない(秒読み機能のある対局時計は事実上単一のサプライヤーによって供給されている)。インターナショナルマインドスポーツアソシエーションとはどんな団体なのかについては改めてエントリーを起こしたい。
「スポーツアコード」に加盟する効果であるが、いわゆるマインドゲームの場合は、さまざまなマインドスポーツ競技が一同に会した世界競技会(今回の北京のスポーツアコード・ワールド・マインド・ゲームズ)の種目になることが容易に想像できるが、2006年にスポーツアコードの前身団体の GAISTに加盟を果たした剣道に関して、全剣連会長の武安義光氏がその意義を説明している。
全日本剣道連盟|寄稿「まど」
GAISF加盟の意義
4月に行われたGAISF(国際競技団体連合)総会で、国際剣道連盟(IKF)の加盟申請が承認されたことは先月号でお知らせした。これは国際剣連の活動として行ったものですが、その意味について、全剣連関係者に理解して頂くため、ポイントを記します。
①GAISFは国際的広がりを持つ101の競技団体が加盟しているIOC関係団体として国際的に認められた権威ある団体であること。
②国際剣連が加盟したことは、「剣道」の名が国際競技界において国際的に公認されたことになり、例えば剣道に紛らわしい泡沫団体の加盟を阻止する予防効果が大きいこと。
③剣道が国際的に市民権を得たことにより、剣道の後進国が政府から援助を受け易くなる。加盟を要望する剣連の期待に応えた。
④加盟団体にはオリンピック種目もあり、GAISFはIOC関係の有力団体であるが、剣道のオリンピック競技への加盟とは直接関係はない。
⑤加盟するための基準として世界大会の開催が必要であるが、現在の世界大会で十分であること。
この文章の存在は以下の剣道関係者のブログで知った。非常にわかりやすい説明である。
まず背景として、ヨーロッパ諸国の剣道連盟を中心に、 GAISFに加盟していないと体育館ひとつ借りるのも容易ではないという 切実な事情がありました。 ※上記(1)および(3)の部分 それでも日本主導の国際剣道連盟は 「剣道は武道であってスポーツではないから」と消極的でしたけれども、 コムド系の世界剣道連盟などといった団体が 日本の文化性を排除してよりスポーツ化した剣道をもってGAISF加盟を果たし、 国際社会における剣道の主導権を握ろうとする動きが現れました。 日本剣道界にとって、これは大いなる危機でした。 もし先にGAISF加盟を果たされたら、 世界各国の剣道連盟の多くは国際剣道連盟から離脱し、 GAISF加盟の団体に移籍していたことでしょう。 そして世界の潮流はその団体の主導による 日本の剣道とは似て異なるKENDOが世界の主流となってしまい、 下手すると日本の剣道が「剣道」と名乗ることすら出来なくなりかねません。 これを阻止するため、剣道を称するいかなる団体より先んじて 国際剣道連盟がGAISFに加盟しなければならなかったのです。
剣道の場合は大会等の活動の確保に、スポーツアコードの前身団体である GAIST への加盟が必要であったこと、また、日本に淵源を発しない剣道が世界で主流となることを防ぐ効果があったことが書かれている。これらを読んで筆者は将棋も早いうちに国際競技団体が設立され、スポーツアコードに加盟申請することが必要になるのではないかと考えている。
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