今年1月28日の Bonanza の思考部分のソース公開と、昨年の2月に floodgate ができて、コンピュータ将棋の自動他流試合ができる環境ができたことと、どちらのほうがコンピュータ将棋が強くなることに効いたのだろうか。そもそも比べる性質のものではないかもしれないが、筆者は、将棋倶楽部24ではソフト指しが原則禁止になっているので、 floodgate ができたことも非常に大きな出来事だったのだと思っている。ということを次の二つのエントリーを読み比べながら思い返している。
コンピュータ将棋協会blog » wdoor floodgateでコンピュータ将棋の自動他流試合
早い話が、たくさんのコンピュータ将棋をログインさせて適当に対戦相手を見繕ってくれるシステムです。詳しい内容は、floodgateのページをお読みください。このモードによって、将棋倶楽部24のコンピュータ将棋バージョンとして簡単に使えるサイトになりました。shogi-server@wdoorでは以前から、将棋倶楽部24と同様、対局者自身が対局を申し込むシステムがありましたが、floodgateモードによって、コンピュータ将棋開発者の申込手続きの手間が不要になり、最小限のネット対応だけで対局できるようになりました。floodgate自体は、コンピュータ囲碁のCGOSをモデルにしているようです。
shogi-server@wdoorのシステムはsourceforgeでオープンに開発されているので、GPS将棋のブログ、駒得少年の冒険で今後の更新内容をチェックできるでしょう。マッチメークの方法など、よいアイデアをお持ちの方はこちらで提案してみましょう。昨日にも述べましたが、特にコンピュータ将棋は対戦相手が増えるほど現れる局面のバリエーションも増え、新しい発見も増えます。開発したプログラムの強みや弱み、そして思わぬバグも発見できますので、コンピュータを強くするチャンスが広がります。実戦で鍛えるのが上達の近道であることは、人間も機械も同じ。何より、実力がレーティングで算出されることは、励みになりますし、コンピュータ将棋の進歩にも貢献してくれるでしょう。
棋聖戦中継 plus: 【梅田望夫観戦記】 (1) 将棋界は「これからの10年」抜群に面白くなる
そして第三の理由は、コンピュータ将棋がとにかく強くなってきたことだ。ついに人間対コンピュータの最高峰の戦いが、いよいよ射程に入ってきたのである。そしてそれには2009年1月28日の事件が深く関係している。
事件とは、最強ソフトの一つ「ボナンザ」のソースコードが公開されたことである。ソースコードが公開されると、世界中の誰もが自由に「ボナンザ」 の思考の中身を学び、そこに改良を加えてその成果を世に問うことができる。結果として、開発の切磋琢磨が激しくなって、進歩が加速されていくのだ。その証 拠に、ソースコード公開からわずか三か月後に行われた第19回世界コンピュータ将棋選手権(5月)では、ボナンザに学んだボナンザ・チルドレン(コン ピュータ将棋に詳しい勝又六段の言葉)が、上位を占めてしまった。そして今も、日進月歩のスピードで強くなっているのだという。
海外向けには、Spear で参加した Reijer Grimbergen 氏が書いている第19回世界コンピュータ選手権の英語のレポートで、floodgate で「ボナンザ・チルドレン」のソフトが他流試合を選手権までの短い期間で行っていたことと、Bonanza のソース公開のどちらにも言及している。
コメント