大昔、といっても戦後のことだが、企業の採用の筆記試験で「腰掛銀」の意味を問う問題が出されたらしいことを何かの棋書で読んだことがある。それに匹敵する、いや、もしかしたらそれ以上のことが先週の木曜日に将棋界には起きたのではないかと筆者は思っている。テレビ東京系列でほぼ毎週の木曜日の19:30 から放映されているアニメ「NARUTO」の297話のエピソードタイトルが「棒銀」であったのだ。
第297話 「棒銀」
遂に暁の飛段との戦いになだれ込むアスマ班。隙を突いて先手を取るも、次第に明らかになる飛段の能力に戦慄する一同。そこにもう一人の暁、角都も登場し、 圧倒的な実力差の元、木ノ葉勢は絶体絶命の窮地に立たされる。撤退すら不可能と悟り、厳しい表情で皆に作戦を言い渡すアスマだが――その内容はシカマルを 始め、仲間達を驚かせるものだった。
筆者は木曜日の本放送を見ていたが、3分間ほど、アスマとシカマルの二人の将棋のシーンがあった。来週が一つのクライマックスのエピソードになるのだが、将棋が効果的なメタファーとして用いられた回だったと思う。何より、人気アニメのエピソードタイトルが「棒銀」になったのが画期的である。
なお、「棒銀」は英語では "Climbing Silver" と訳されることが多く、筆者もそれに倣っている。以下に、Google でキーワードを Climbing Silver にして検索した結果にリンクをしておく。筆者が今検索したところでは、NARUTO のこのエピソードに英語の字幕をつけたたらしいものが検索結果のトップに来ており、また、検索結果上位10件中、実に5件が NARUTO 絡みのものであった。
日本で NARUTO がオンエアされた後、数時間から数日のうちに字幕で見るファンは世界中のいたるところに居る。本編中の一瞬の字幕だけでなく、それよりも参照機会の多いと思われるエピソードタイトルに Climbing Silver という将棋のテクニカルタームが使われたことになる。これは、「腰掛銀」が企業の採用試験に使われた以上の出来事ではないかと筆者は思っている。
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