番組終了間際に、「途中、千日手が成立していましたが、投了優先の規定で先手勝ちになりました」というテロップが流されたとされる、第16期銀河戦決勝トーナメント1回戦第1局の阿部八段対松尾七段戦の再放送を昨日の深夜に見てみた。最初にオンエアされたときには、ながら試聴で終盤のいいところしか画面で見なかったので、気付かなかった。再放送をみたところ、確かに、その旨のテロップが流されていた。
具体的には、59手目、63手目、67手目、71手目の局面が同一の局面で、千日手が成立していた。棋譜は、囲碁将棋チャンネルの銀河戦のページの盤面再生でたどることができる。
『日本将棋連盟公式将棋ガイドブック』の「プロ棋士対局規定」をあたってみたが、千日手については、第3章対局の進行第6条4項で「同一局面が4回現れた時点で「千日手」となり、無勝負とする。ただし、連続王手による千日手の場合は、王手をかけている対局者が手を変えなくてはならない」とあるだけで、千日手の成立を誰が指摘できるのか、その指摘を確認するのは誰なのか、また、記録係など第三者が千日手の成立を指摘してもよいのか、「千日手が成立しているのでは」という指摘があった場合、動いている対局時計の扱いをどうするのか、については明文規定が無い(ちなみに、反則手については、指摘、確認の手続き、時計の扱いについて同対局規定の第3章第8条で定められている)。千日手は、海外で行なわれる大会でも発生することがあるので、千日手成立の具体的な手続きが明文化され、少なくとも日本語がわかるものなら誰でもプロがどのようなルールのもとで千日手を扱っているのか誤解なく理解できる状態になるのが望ましいと思う。
本件に関連すると思われる様々な方々のエントリーを参照した。以下にリンクしてみる。
勝手に将棋トピックス - 千日手を見逃して終局
続・大平の挑戦!: ルール
ギズモのつれづれ将棋ブログ 阿部 隆八段 vs 松尾 歩七段
ゴルフ型かサッカー型か
日本将棋連盟のルールは性善説でおたがいにすばらしい棋譜をつくろうという合意のもとでつくられています。これはゴルフに通じるもので、紳士どうしのスポーツなのだから不正をしてもトクなこことはない、という精神です。
サッカーだと庶民のスポーツですし、ずるがしこいのがあたりまえですからルールはシミュレーション対策までふくめてがんじがらめにちかい状態ですし、審判員についても日常的に訓練がされています。
将棋は紳士のスポーツとしてゴルフ型でいいんじゃないでしょうかねえ。いやなひととは指さなければいいだけですし。
投稿情報: madi | 2008年8 月20日 (水) 01:25
> madi さま
ゴルフ型、興味深いですね。私見では、ゴルフは同種の競技がないので、紳士協定的なルールのまま国際化が可能だったのだと思っています。将棋の場合は類似の競技として、チェス、シャンチーなどが厳然としてあり、それら競技では頻繁に国際大会が行なわれていますので、将棋の国際化に伴い、それら競技のルールに引っ張られるのは仕方がないというか、必然なのではと考えております。
投稿情報: takodori | 2008年8 月20日 (水) 12:07
ゴルフのルールは、性善説に基づいていると思いますが、でもかなり細かいですね。将棋のルールには性善、性悪にかかわらず、曖昧な部分が残っているような気がします。
ただ、千日手の規定は、明確であっても当事者が誰も気がつかないと言うことがあり得るのかもしれません。(銀河戦もそうだったのかも)その際には、投了優先は明確な規定だと思います。
投稿情報: 蒼龍 | 2008年8 月26日 (火) 07:49
> 蒼龍さま
銀河戦は、解説者、聞き手とも「あれ、千日手では」とは言っていたんですよ。結局しっかり数えなかったんですけれど。
禁じ手(反則)については投了優先の原則が明文化されていますが、千日手についてはそれが明文化されていないので、明確といいきれるのかというのが、エントリを起こした趣旨です。
投稿情報: takodori | 2008年8 月27日 (水) 00:03