将棋の海外伝播などについてのブログ

実戦に強くなりたい外国人の棋友に勧めたくなった飯野七段の詰将棋の新刊

　昨日買った飯野七段著の「超実戦　駒を取る詰将棋」（池田書店）はなかなかの意欲作である。著者の「はじめに」が上記のリンク先でも「著者からのメッセージ」として読める。また、編集者（本には奥付に編集協力　椎名龍一とあるので同氏と思われる）の問題意識は、本のほうには無く、上記リンク先だけで読める。筆者が気になる部分を引用してみる。

　まず、編集者からのメッセージ、より。

　私自身色々な詰将棋を解いてみましたが、実戦で同じような状況に出くわしたことがありませんでした。元来の詰将棋は駒を「切る」作業ばかりで「取る」という本来の実戦のあり方がないことに疑問を持っていました。(詰将棋は実戦とは違うんだよ！といわれれば何もいえませんが・・・）

　続いて、著者からのメッセージ、より。

　しかし詰将棋はパズル的な性質を持つように作られているため、駒を捨てて詰むように作られている作品がほとんどです。そのため「駒を取りながら迫る」という実戦で頻繁に現れる自然な着手が、これまでの詰将棋ではないがしろにされてきたことも事実でしょう。

   詰将棋を解くことは終盤力をアップさせてくれますが、詰将棋ばかりを解いているとときには実戦の終盤で「駒を捨てる手ばかり考えるようになってしまい、自然な手が見えなかった」という弊害をもたらすこともあるのです。

　本書はこのような問題意識の元に作られた、「思想」を感じる詰め将棋集である。詰め将棋にパズル性、芸術性を求める方には向かないかもしれないが、将棋に強くなりたい方や、指導者の方は買い求めて絶対に損のない１冊ではないかと思う。

　外国の将棋ファン、特にチェスの知識が背景にある方は、駒を取って、それをまた使う、ということに慣れていない（日本人でも、将棋が初めての人ならそれは実は同じである）。駒を取って、それを打つという反復練習問題が、詰め将棋という、正解手順を示されれば言葉がわからなくても誰でも納得ができる形式で出版されたことは、実戦に強くなりたい海外のファンにとって朗報と考える。この本は、外国人の棋友に強く勧めたい日本語棋書の一冊となった。

Gyokushoプロジェクトについて続報

　昨日取り上げた Gyokusho と命名された、Xbox 360 のアーケードスタイルコントローラーを自作する過程を公開したブログエントリーは、その世界ではかなりのインパクトを持って迎えられているようだ。下のイメージは、先ほど、Technorati で、キーワードを Gyokusho、言語を English にして検索した結果の一部をスクリーンショットしたものである。見ると、"180 Blogs link here","2,404 blogs link here" という文字が見える。一般的に言って、多くのブログからリンクをされているブログは読まれている可能性が高いブログである。（参考までにいうと、将棋界で一番読まれていると思われるブログ「勝手に将棋トピックス」は Technorati で言語を日本語にして得られた結果によれば、"48 blogs link here" と本日現在表示される）。かなりのインパクトがあったのではと判断する根拠は非常に多くのブログからリンクしているブログが Gyokusho プロジェクトを取り上げているから、である。

Xbox 360のアーケードスタイルコントローラー自作者の Gyokusho Project

　筆者は疎い世界の話だが、ゲーム機のアーケードスタイルコントローラー（リンクは英語版Wikipedia）を自作するのが結構な趣味として認められているらしい。Xbox 360 (リンクは日本語版 Wikipedia)用のアーケードスタイルコントローラーを自作する過程を "Project Gyokusho" と命名して豊富な写真つきで公開したページがその道の世界で話題となっている。Gyokusho はもちろん将棋の玉将のこと。こういうニッチながらかなりの技術的な専門知識の必要な趣味の世界のプロジェクトのコードネームとして Gyokusho とか、Shogi とかの単語が流通することもある。

instructables : Xbox 360 Arcade controller - Project Gyokusho (英語） --- 多くの写真を使って、Xbox 360 用のアーケードスタイルコントローラーを自作する過程を説明している。コントローラーのフロントパネルの手書きをもとに作った「玉」の字がそんなにうまい字でないのがほほえましい。プロジェクト名についての説明部分を引用する。

The name, Gyokusho is actually stolen from a japanese chess variant called Shogi. The equivalent of the king is called the Gyokusho or "Jade general". （Gyokusho という名は、実際には、将棋と呼ばれる日本のチェスバリアントから採用した。チェスのキングと同等の駒が「玉将」または"Jade general" と呼ばれる　－　日本語訳は筆者による）

MAKE: Blog: Homemade Xbox 360 arcade controller (英語） --- MAKE は、2005年に創刊されたあらゆる技術分野のDIY を趣味とする方むけのムック誌。その Blog が、上記のプロジェクトについてカバーしたこともあり、趣味を同じくする人々の多くの Blog で上記への言及が見られる。

　聖書によれば、「はじめに言葉ありき」という。どういう形であれ、将棋やそれに関連した単語が Shogi, Gｙokusho などのように文字になり、いままで将棋を全く知らなかった人の目に届くことが、将棋普及の第一歩と筆者は考えている。

将棋世界1月号からメモ

　92ページ、佐藤棋聖の原稿より。

「将棋」という世界に誇れる日本文化、最高の頭脳ゲーム。

　タイトルホルダーの1人から、将棋は「世界に誇れる日本文化」との認識が示された。

　なお、2月号予告の見出しは、想像するに、映画「ビートルズがやってくる　ヤァ！ヤァ！ヤァ！」のタイトルをもじったもののようである。

美濃囲いの説明が英語版 Wikipedia の将棋の項目に追加

　Wikipedia の各項目（例では "Shogi")のページの一番上の部分をみると、

左のスクリーンショットのように、article, discussion, edit this page, history のタグが見える。この４つのうち、history をクリックすると、"Shogi" の項目の説明が変化してきた履歴を一覧することができる。

"Shogi" の項目の history(英語）

　上記をみると、12/1 に、The Mino Gakoi castleの説明が追加されたらしいことがわかる。下記のスクリーンショットのようにして Compare selected versions のボタンを押すと、11/25 の "Shogi" の項目の内容と、12/1 の "Shogi" の項目の内容を比較して、どこが変わったのかを知ることができる。

　　その変わった部分が美濃囲いの説明である。（このような結果が現れる）。

　Wikipedia の各項目は、このように、時間が経つにつれて内容が充実していくのが通例である。NARUTO や Clunhouse Clubhouse Games で Shogi を初めて知って、Wikipedia の "Shogi" の項目を 12/1 以降にすみずみまで参照した人は、将棋にはMino Gakoi という囲いがあるのだということを読むことになる。

KIF2SWFで作成した盤面をブログに上げるときの注意事項

　11/27のエントリーでご紹介した、KIF2SWF で作成した再現可能な盤面だが、イタリアの方から、Internet Explorer ではちゃんと見えるが、Mozilla Firefox だと盤面自体が見えないという指摘があった。KIF2SWFの開発者の方やTypepad のサポートなどの協力を仰いでいろいろ調べたところ、Internet Explorer で Typepad のブログの HTML 編集をすると、デフォルトがリッチテキストモードになっていて、WYSIWYGのタグ補正機能で HTML を書き換えてしまうことが原因だということがわかった。対策として、KIF2SWF のファイルの読み込みを HTML で書く場合には、Internet Explorer ではなく、Mozilla Firefox でブログエントリーをすれば、この問題は発生しない。 下記の盤面は、Firefox でも問題なく見えるはずである。

　また、開発者の方には、「双玉にしてほしい」という要望をすぐに実現していただきもした。感謝の言葉もないくらいありがたかった。

「有名人１７人の話を英語で読んでみる」の1/17は羽生三冠

　これも気がつくのが遅くなってしまったネタ。

本の表紙の写真（紀伊國屋書店BookWeb)

出版元中経出版の「有名人１７人の話を英語で読んでみる」の案内

  日本人向け英文誌「English Zone」に載った有名人インタビュー（編集部が英訳したものと思われる）の１７人分を１冊にまとめたものらしい。その中の１人が羽生三冠とのこと。