将棋の普及振興に功績をしるされた方として第34回将棋の日に日本将棋連盟から感謝状を贈られている柴田ヨクサル氏のマンガ「ハチワンダイバー」15巻の第152話「お勉強の時間」から第156話「”大和”な女」に、そよが「世界隊」と称される外国人の将棋指しの5人組と対戦する描写が描かれている。そこで受け売りの形で示された鬼将会の将棋世界に普及に関する考えが興味深い。その部分のセリフを抜書きしてみる。
- 世界普及という点では囲碁に遅れをとっている将棋である 囲碁人口約5000万人 将棋人口 約1000万人。
- ではなぜ将棋は普及しにくい
- 白と黒の囲碁と違い…漢字だからか?…いや…まず「チェス」という大ボスがいるからだ
- 「チェス」の普及率はベースボール級
- チェスプレーヤーにしてみれば将棋など東洋のボードゲームのひとつだとでも思っているのだろう 象棋(中国)チャンギ(朝鮮)将棋(日本)
- チェスは取った駒を使えないので強いもの同士が対戦すると引き分けが多くなる
- 将棋は取った駒を使える
- 悪いがチェスさん将棋君の戦略性の深さはアンタの何百倍だ
- 「日本の中だけの将棋に未来はない」
- 何年かかるかわからないが「将棋」を…”世界の将棋にする”
- 世界中に将棋が普及したとする 将棋好きの異国の少年が日本にやってくる…とする 少年はその辺の道場でもまるで勝てず日本の層の厚さを知る そして少年はあらためて感じる 将棋の聖地へやって来たんだ
- 野球選手がアメリカのメジャーリーグを目指すように世界中の将棋指しが日本を目指す!!!そんな”将棋世界”をつくる普及の先兵が彼らだ
- 神か悪魔が乗り移ったような伊藤宗看・看寿の詰将棋はダビィンチの「モナリザ」やゴッホの「ひまわり」にも劣らない芸術作品だ
- 韓国 中国が本気で将棋を指し始めたら日本を越えるぞ
上記は概ね筆者の考えと同じだが、チェスで引き分けが多くなるのが取った駒を使えないことと因果関係がはっきりとあるのかどうかと、将棋の戦略性の深さがチェスの何百倍にもなるというのはやや疑問である。チェスの場合、引き分けが多いのは、定跡の発展が多分将棋よりも進んでいることと、トーナメントの進行の方式上、対局者の一方、もしくは双方が最初から引き分け狙いで指す場合があることなどもその要因と考えられるのではないか。また、戦略性というのは定義があいまいな概念であり、マンガのなかの世界でならばよいが、チェス好きの人に「将棋の戦略性はチェスの何百倍」ということを持ち出すと、時間だけを消耗する議論を招きやすいので、筆者としては「戦略性」という言葉を用いず、「駒の数と升目が多く、その上に、持ち駒が使えるので、駒の総数が減らず手の選択肢がチェスより多い。また、終盤になっても選択肢の数が減らず、むしろ増えていく」という説明をするようにしている。将棋の戦略性を説明するには、私見では玉の囲いにかける手数と固さの関係、および攻撃陣を整える手数とのバランスについての説明をするのが不可欠だが、それをある程度の将棋の対局経験がないチェスプレーヤーに理解してもらうのはほとんど不可能と考えている。(チェスでは囲いにあたるとされる Castling をする際、基本的には King は一手しか動かさない。将棋の場合は玉の動きだけで1手の囲いから4手(穴熊など)までのパターンがあり、多彩である)。
ともあれ、人気の将棋マンガ「ハチワンダイバー」の中で、上記のように将棋が世界に普及していくロードマップが示されたのは興味深い。また、”ダビィンチの「モナリザ」やゴッホの「ひまわり」にも劣らない芸術作品”とされた煙詰については、既に HIDETCHI 氏が Smoke Mate として初手から詰み上がりまでを鑑賞できる英語のビデオを作製していることを最後に付け加えておきたい。
チェスの普及が世界的であることの比喩ならばベ-スボ-ルではなくサッカ-でしょう。
投稿情報: ミケルス | 2010年5 月23日 (日) 17:09
>ミケルス
ええ、そういう感想はわたしもヤングジャンプで連載を読んだときに浮かびました。「概ね」と本文で書いているのはその点も含意しています。
投稿情報: takodori | 2010年5 月24日 (月) 11:29
チェスが、あんまりはやらないのは、詰められないからだと思う。
ピースダウンが目的だと、、クインつくるのも、相手をピースダウンでしょ。
王様とったら勝ちなのに、、詰めにくくて、、。
将棋は、ほとんど詰められるから、、スリリングで、、しかしムツカシすぎて、昨今は指すひと、減少してる、ムツカシすぎるのも面白くないわけで、他に、娯楽、レジャーは、多いからねえ。
投稿情報: 通行人 | 2010年7 月31日 (土) 00:34