いわゆる公益法人制度改革と日本将棋連盟との関係は、主に情報公開の関連で論じられることが今まで様々なブログ上で多かったと記憶している。それが非常に重要な論点であることには深く同意するが、今、緊急に認識をしなければならないことは、手をこまねいていて何もしなければ、(社)日本将棋連盟は2013年までに解散することになる、ということが昨年5月25日に成立したいわゆる公益法人制度改革関連3法(「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」に書かれているということかと思う。
3法が成立したのが昨年の名人戦契約問題の最中であり、おそらく、事の重大性が当時も今も将棋界の中で十分に顧みられていないのではと筆者は考えている。というか、筆者自身も本日いろいろと調べてみて、事の重大性に気がついたばかりの段階である。
一方、外部環境の変化に敏感な公益法人は、3法の成立が意味するところをよく研究しており、既に対策を練っているようである。その内容を親切にも公表してくれている公益法人すら存在する。(社)日本アマチュア無線連盟(JARL)の以下のページをご覧いただきたい。簡潔に要点がまとめられている。特に重要なところはリンクの下に引用する。
公益法人制度改革について(1)【JARL NEWS2006年夏号掲載分】
公益法人制度改革について(2)【JARL NEWS2006年秋号掲載分】
これらの法律施行後(平成20年度内の予定)、JARLも含めた既に設立済みの法人は、新法施行後5年間に限り「特例民法法人」と称されてそのまま活動を続けることができますが、新法施行後5年以内に認定委員会の認定を受けて公益法人となるか、一般社団法人や一般財団法人等に移行しなければなりません。もし、認定を受けなければ解散したものとみなされます。
既設の法人が、新法施行後に公益法人の認定を受けるためには、社団・財団法人法及び認定法で定める諸基準を満たしていることが必要となります。
新法施行後に公益法人の認定を受けるための諸基準を満たすには、JARL の場合、定款変更まで要する事項が結構あることが上記リンク先を読むとわかる。
同じく以下には、JARL が新法施行後の公益法人認定を受けた場合と受けなかった場合のメリット、デメリットが表になって比較できるようになっている。非常に参考になる。
(社)日本将棋連盟が解散ということになれば、将棋の国際普及の要のイベントである国際将棋フォーラムも行われないことになるのは必至である。その事態は個人的には望ましくないと考えている。
新法の施行予定は来年とされている。すなわち、次の棋士総会でできあがる新体制が、公益社団法人認定をを目指すのか、一般社団法人の認可でよしとするのか、はたまた、何もしないでいて解散するのかの重要方針を決めることになるのであろう。
新法成立前の文書ではあるが、内閣委員会調査室の久保田正志氏の「110年ぶりの公益法人制度改革」(pdf file)もなかなかわかりやすい今回の制度改革の解説だと思った。興味のある方は、あわせて参照されたい。
日本アマチュア無線連盟会員(第一級アマチュシ無線技士)の弁護士です。ここは総会規約の改正で荒れる総会でもめなれているから応対がはやかったんでしょうね。アマチュア無線家になるのには法規の試験もあるからある程度の法的思考もできるでしょうし。
そういえば法学部出身の棋士っているんでしたっけ?碁のほうには弁護士兼務の棋士がおられますが。
投稿情報: MADI | 2007年3 月19日 (月) 22:24
>MADI さま
なるほど、対応が早いのはそういう背景があったのではないかということですね。
瀬川四段が、確か法学部出身じゃなかったかと思ってさがしたら、そういう記事が以下にありました。http://www.yomiuri.co.jp/junior/articles_2006/060302.htm
投稿情報: takodori | 2007年3 月20日 (火) 10:30
あと、片上五段も法学部出身でした。
投稿情報: takodori | 2007年3 月22日 (木) 12:37
遅いレスですが。法学部出身ではないですが実務的に総務・経理畑でやってきた者です。同種類の団体として、大相撲協会のHPを見ると、あるいは日本棋院の理事長の新春のコメント見ると、この問題についての危機意識深いものがあります。公益法人の認定基準、特に当該法律4条①、③、⑧、⑭イ はクリア難しいような気が。ゴルフクラブと大相撲協会は増えすぎた社団法人・財団法人の例のように法学者さんに否定的に有識者会議でコメントされていますから将棋連盟なども認定は望み薄かも。
投稿情報: 隠居よたろう | 2007年3 月28日 (水) 16:48
> 隠居よたろうさま
コメントありがとうございます。
「当該法律第4条~」とあるのは、いわゆる「認定法」すなわち「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」の第五条(公益認定の基準)のことと思われます。
第五条の①、③、⑧、⑭イは、わたしも問題になる可能性がある条文だと思っています。
公益認定等委員会が行うのは原則的には書類審査とされており、申請時の添付書類にどんなものを含めなければいけないのか(定款の変更案は確実、そのほかがあるのかどうかが現段階でよくわからない)が手続き上重要な点になると今のところは考えています。
投稿情報: takodori | 2007年3 月29日 (木) 10:22