公益認定のチェックポイントの「競技会について(案)」、公益認定等委員会の第26回会合で討議が昨年の12月14日に行われ、その議事録が1月の17日に公開された。
開催状況 第26回
競技会のチェックポイントは、将棋界で公益法人の認定を申請しようとしている団体にとって非常に大事なチェックポイントである。ただ、上記で公開されている議事録を読む限りでは、具体的にどのような団体が公益認定されるのかは依然として曖昧である。上記の「競技会について(案)」には以下のような定義と3つの事実認定基準が示されている。
ここでいう「競技会」は、スポーツ等の競技を行う
大会を開催する事業である。
1、当該競技会がどのような公益を増進するか,その趣旨を明らかにしているか
2、公益目的として設定した趣旨に沿った競技会になっているか
3、出場者の選定や競技会の運営について公正なルールを定め、公表しているか。
将棋の競技会がこのチェックポイントの対象となりうるかどうかについては、議事録の中に以下のようなやりとりが委員間であったので、対象となるとみてよいだろう。
まずは、出口委員と公益認定等委員会事務局のやりとり
出口委員 もう1つは最初の文章ですけれども『「競技会」はスポーツ等の』というふうに「等」が入っているのですが、これは切磋琢磨で例えばどんな範囲までを考えているのでしょうか。
事務局 例えば文化の関係でも将棋ですとか囲碁ですとか、そういった勝ち負けのはっきりしているようなものがあろうかと思います。要するに競争を中心として行われるものというふうな形で考えると、そういったものは含まれ得るかと考えております。
続いて、袖井委員と公益認定等委員会事務局とのやりとり
袖井委員 先ほどの説明をもう一度確認したいのですが、「スポーツ等」というところの「等」には、囲碁、将棋とか、そういうのも全部入ってしまうということですか。
事務局 そういうふうに考えてございます。
袖井委員 そうすると、普通の遊びとの区別がかなり難しくなりますね。ゲームみたいなものとか、ダーツとか。
事務局 この辺りはちょっと微妙なのですが、文化芸術などとも似てくるところとい
うか、おっしゃるとおり娯楽的なもの、例えば競争的な公正なルールを定めてマージャンの大会をやったときにそれが公益目的事業なのか、総合的に考えると、そういうことが公益なのかということの判断は、だんだん娯楽の分野になってくると難しくなってくるのかなと考えております。
このやりとりから筆者が感じ取れることは、事務局の腹案としては、将棋や囲碁は「スポーツ等」の等の部分に含まれるということになっている、ということだが、袖井委員の指摘するように他の文化的、娯楽的な競技との境目ははなはだあいまいである。我が国には文化芸術新興基本法という法律があり、その第十二条には
(生活文化、国民娯楽及び出版物等の普及)
第十二条 国は、生活文化(茶道、華道、書道その他の生活に係る文化をいう。)、国民娯楽(囲碁、将棋その他の国民的娯楽をいう。)並びに出版物及びレコード等の普及を図るため、これらに関する活動への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
と、将棋と囲碁が国民的娯楽として例示されている。事務局の回答をみるかぎり、将棋・囲碁はマージャンとは別で、娯楽的なものではないように認識されているようにもとれるのだが、この辺り、はっきりとはしていないように感じる。
いずれにせよ、今回公開された議事録を読む限りでは、ほぼプロ棋士だけに参加者が限られた棋戦の開催が公益事業になりうるのかどうかは判然としない。議事録の最初の方で事務局は『相撲の「興行」などは、ここでいう「競技会」の典型的な類型からははずれたものでございます』と述べており、実質的に相撲興行についての公益性の判断からこのときの会合では逃げている。申請期間が始まって、実際に公益認定等委員会がどう判断するかを待つよりほかないのであろうか。公益認定等委員会の実質的な権限は極めて強いといわざるを得ない。
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