将棋の海外伝播などについてのブログ

韓国在住の英語教師が、Shotest Shogi 3D を買ってみたというエントリー

　おそらくはカナダから英語教師として韓国に渡っている思われる方のエントリーがBoardgamegeek の Shogi Forum に投稿されていた。

I read about the PC version in the shogi email list and made an impulse purchase last night.

　最初、彼のPCのクロックが、韓国時間にセットされているのがインストールするときに問題になったらしく、購入元とメールでやり取りをし、一日後に使えるようになったとのことだ。そのやりとりの中で、Shotest Shogi 3D をインストールするPCは、ときどきインターネットに接続する必要があるということを購入元から教えられたとのこと。購入元で、そのソフトがオリジナルのものかどうかを、保護プログラムがチェックしに来るらしい（不正コピーのプログラムを防ぐためと思われる）。

　結局、PCのクロック設定が、韓国時間だと思っていたら、前に修理をしたときに、カナダ時間に合わせられていたのがインストールがうまくいかなかった原因のようで、韓国時間にセットをし直したら、プログラムは快適に動きだしたようだ。リンクした記事を読む限り、苦労して動くようになったソフトとの将棋が楽しくて仕方がない、という風情である。

　このようなブログを書いている関係上、筆者は、外国に何人も将棋の関連でやりとりを交わしたことがある人がいるし、韓国の将棋の事情もある程度は知っているつもりであったが、この方のことはリンク先の記事を読むまで全く知らず、完全に予想の外だった。Windows PCで走る英語の将棋ソフトがダウンロード販売を開始したことにより、将棋を楽しむための地理的な制約は確実に小さくなっていると思える。英語が読めて、Windows PCでインターネットに接続できて、一定の経済力があれば、日本で売られている3D将棋と同等のソフトを日本語を習得することなく楽しむことができる時代がやってきた。上のリンク先のエントリーは、それを裏書きするものである。

７月５日にNHKのBS2で、先日の名人戦の特別番組

　７月５日（土）の午後１時半から、以下のような９０分番組がNHK BS2での放映が予定されているようだ。

森内ｖｓ羽生、勝敗の一手～谷川・渡辺が見た将棋名人戦七番勝負～

DAILY YOMIURI ONLINEに第１８回世界コンピュータ将棋選手権の記事

　６月２７日付けで、以下にリンクしたような英文記事が読売新聞社の英字紙、DAILY YOMIURI ONLINE に載った。これは、６月２５日付けで本紙に載った日本語記事の英訳のようである。日本語記事の概略については詰将棋メモ: コンピュータ将棋イベント の２００８年６月２５日の欄を参照されたい。

Can advanced shogi software defeat professional players? : Culture : Features : DAILY YOMIURI ONLINE (The Daily Yomiuri)

 

在デュッセルドルフ日本国総領事館のドイツ語ページにも本間六段訪問の記事

　日本語の記事については、当ブログの6/18付けエントリー 在デュッセルドルフ日本国総領事館のホームページに将棋セミナーの記事が載ったでお伝えしていたが、昨日、shogi-l へのドイツ人と思われる方からの投稿で、ドイツ語ページにも本間六段訪問の記事が載っていることを知った。領事館のドイツ語のページは以下のリンクからたどれる。

Sho^gi-Veranstaltung am 21. Mai 2008

　見ると、ページの右側のほうに、ドイツ将棋協会のホームページと、日本将棋連盟のホームページへのリンクがある。領事館のホームページから、現地の将棋団体のホームページへリンクが張られるのはやや異例な気がするが、もちろんありがたいことである。日本将棋連盟のページが、ドイツ語でないまでも、せめて英語版があればと思う方は、領事館関係者、ドイツ語読者の双方にいたのではないだろうか。

「礼儀、集中力、勇気」は将棋の専売特許ではない

　FujiSankei Business i. 2008/6/25に、以下にリンクした記事が出ている。

FujiSankei Business i.　総合／礼儀、集中力、勇気…効用に注目　「子供将棋」モテモテ

　日本の伝統的文化である将棋の特性が見直されている。礼儀、集中力、勇気…。その効用が子供の間で静かな広がりを見せている。

　筆者は、引用部分の「礼儀、集中力、勇気…」の「…」の部分を突き詰めて考えていくことが将棋の普及にとって大事なことなのではないかと思う。なぜなら、礼儀、集中力、勇気という効用は、将棋だけのものではなく、日本の武道一般（柔道や剣道など）も訴求している効用と思われ、その三つでは、将棋との差別化が十分ではないと考えるからである。

　武道一般では身につかず、将棋を習得することで身につくと思われることは、共通の目的（相手玉を詰める）を達成するために、能力の異なる者（駒のこと）が協業するとはどういうことかを、総大将の立場で、盤上の戦いを通して擬似的に体験し、理解するということではないかと思う。また、そのためには、それぞれの駒の特性、長所、短所を指し手である本人が深く理解することが必要条件となるのだが、これは、擬似的にチームリーダーとしての資質を開発していることになるのではないだろうか。

　学校の部活動などで、サッカーや野球などの団体競技は盛んであるが、それらの部活動では、ほとんどの場合、普段の練習の指導や、試合にでるレギュラーの選抜、実際の試合の作戦決定、選手の起用などについて、部活動の指導者である学校教師が決定をし、選手である生徒はそれに従うだけというケースが多いのではないだろうか。ともすれば、選手は、ボールを遠くに打ち返すとか、ゴール隅に強いシュートを打てるようになる、とかの身体技術的な練習は多く行うが、勝つために、それぞれの能力や特長の違うチームメンバーがどのように協業すれば最大の力を発揮できるか、という点について、考察をしたり、トレーニングを受けたりということが行われているのかというとはなはだ心もとない、というのが現状なのではないだろうか。

　サッカーの前日本代表監督のオシム氏は、ラミーというカードゲームがサッカーにも資するというのが持論と聞いている。もし、オシム氏が日本の将棋のルールを知ったら何というだろうか。日本には将棋という素晴らしいボードゲームがあるじゃないか、勝つための日本らしいサッカーには、将棋が必要だ、と選手やサッカー指導者に力説してくれるのではないかという妄想を筆者は禁じえないのである。

将棋関連の「Yahoo!ズバリ予想」に今年から将棋の予想が出されているようだ

　昨年８月から始まった 「Yahoo!ズバリ予想」に、今年になってから将棋の棋戦優勝者やタイトル戦の番勝負の勝者予想が出されるようになっている。その結果へリンクしてみる。各リンクの後ろのカッコ内の数字はそれぞれの予想への参加ユーザー数である。

第1回 朝日杯将棋オープン戦の優勝者は？ （4294人）
将棋・第33期棋王戦5番勝負第1局、の結果は？　（3698人）
将棋・第33期棋王戦5番勝負第2局の結果は？　（3412人）
将棋・第33期棋王戦5番勝負第3局の結果は？　（3461人）
将棋・第33期棋王戦5番勝負第4局の結果は？　（3009人）
将棋・第33期棋王戦5番勝負第5局の結果は？　（3446人）
将棋・NHK杯トーナメント決勝戦の結果は？　（2302人）
将棋・マイナビ女子オープン決勝戦第1局の結果は？　（2400人）
将棋・マイナビ女子オープン決勝戦第2局の結果は？　（2195人）
将棋・マイナビ女子オープン決勝戦第3局の結果は？　（2512人）
将棋・マイナビ女子オープン決勝戦第4局の結果は？　（2735人）
将棋・第66期名人戦七番勝負第1局の結果は？　（3636人）
将棋・第66期名人戦七番勝負第2局の結果は？　（3427人）
将棋・第66期名人戦七番勝負第3局の結果は？　（3279人）
将棋・第66期名人戦七番勝負第4局の結果は？　（3712人）
将棋・第66期名人戦七番勝負第5局の結果は？　（3567人）
将棋・第66期名人戦七番勝負第6局の結果は？　（3478人）
将棋・第30期女流王将戦五番勝負第1局の結果は？　（2139人）
将棋・第30期女流王将戦五番勝負第3局の結果は？　（2343人）
将棋・第30期女流王将戦五番勝負第4局の結果は？　（3204人）
将棋・第79期棋聖戦五番勝負第1局の結果は？　（2539人）
将棋・第79期棋聖戦五番勝負第2局の結果は？　（3983人）

　上記を見ると、名人戦の決定局後に行われた、女流王将戦第3局、棋聖戦第2局の数字が、それぞれのシリーズの前局に比べて数字が大きく跳ね上がっている。これは、単なる偶然なのだろうか、それとも19世名人資格者誕生のニュースが大きく伝えられたことが、参加者を増やしているのだろうか。

　勝敗を予想するというのは、将棋にそんなに詳しくない方でも気楽に参加できる楽しみ方なので、将棋の棋戦決勝や番勝負の勝利者を予想するというお題が、Yahoo! のような有力なポータルサイトで出されるようになったのは、ネット上での将棋の楽しみ方が増えたという点で、将棋界にとってプラスであると思う。また、予想者として投票することで、人数の盛り上がりに参加することができるので、予想の一票を投じることは、個人として、最も簡単で手軽にできる将棋の普及方法の一つになるのではないかと思う。

　なお、女流王将戦第2局の予想の結果は、かなり探したが発見できなかった。それで、上記のリンクからは欠けている。

ビデオ画像と盤面再生を両方開けて将棋を楽しめる時代

　梅田望夫氏が、棋聖戦第一局のリアルタイムの観戦記を書いた後に書いたまとめの文章が産経新聞のネット版で読めるようになっている。また、自身のブログにも言及がある。そこで、将棋の見せ方について、以下のようなコメントがある。

棋聖戦「孤独な営為に深い感動」米ミューズ・アソシエイツ社長　梅田望夫 (1/2ページ) - MSN産経ニュース
産経新聞への寄稿: 棋聖戦「孤独な営為に深い感動」 - My Life Between Silicon Valley and Japan

　静寂の対局室と、対局内容の研究が活発に行われる控室。その二つを往復しながら私は、自らの脳だけを信じ、衆人環視のなか苦吟する両対局者の孤独な営為に深い感動を覚えた。きちんと映像に残し、見せ方さえ工夫すれば、将棋界最高峰の対決は素晴らしいコンテンツになるに違いないとも思った。

　これを受けて、今現在、インターネットで映像を使って将棋はどんな楽しみ方ができるようになっているのかを少し考えてみた。「将棋界最高峰の対決」かといわれてしまうと、そうではないのだが、LPSAのネット中継は、Ustream のビデオ画像と、盤面再生の画像の二つを２枚のブラウザに立ち上げて、交互に比較をしながら見ることができてしまう。例えば、本日の朝 10:00 から行われた中倉彰子女流初段対藤田麻衣子女流１級戦。これは Ustream で生中継されていたが、対局後でも、ネット上で盤面再生と、録画ビデオの両方を見ることができる。カメラは、対局開始から終局後までの着席中の両対局者の表情、しぐさを休むことなく捉えている。

盤面再生 - 中倉　彰子初段－藤田麻衣子１級
Ustream Recorded Video - 中倉　彰子初段 vs 藤田麻衣子１級

　この棋戦の持ち時間はチェスクロックで双方３０分、それを使い切ると一手６０秒未満の秒読み。上記盤面再生のコメント画面によれば、両者が一分将棋になったのは、７６手目。その後、どちらが相手の穴熊玉に先にたどり着くかの一手争いが繰り広げられ、最後は先手玉が詰むや詰まざるやという流れになるのだが、一手一手を盤面再生で進めながら、対局者の表情やしぐさを観察し、気に留まったところがあれば、何度でもスライダーを動かして該当の場面を見直せるという贅沢な楽しみ方ができる。Ustream だと、画質がいまひとつなのは否めないが、それは時間とともに改善されていくだろう。

さかもと未明氏が将棋にはまり始めたきっかけは『聖の青春』

　漫画家のさかもと未明氏が、将棋にはまり始めたきっかけは、『聖の青春』を読んだことだったようだ。本人のブログの以下のエントリーのコメント欄で、自らのものと思われる書き込みがある。

佐藤康光先生 - さかもと未明の和みカフェ？

Unknown (さかもと未明)
2008-06-22 00:44:20
ｙさん！！聖の青春、勿論よみました。聖の青春と将棋の子を読んで、この世界取材しようかなとおもつたんですよ。でも、そしたら観戦記やらないかとかいろいろお誘いがあって、将棋覚えないことにこれは駄目ジャンみたいなことになつて。そこまではまったく考えずに取材にいったのですけど、ここまではまるなんてという感じ。

　上記エントリーによると、24日の産経新聞に、佐藤棋聖との面会をもとにした氏のコラムが載るようである。

＜ 6/25 追記　＞

　産経新聞のネット版でもコラムが掲載されたので、リンクを追加しておく。

【めざましカフェ】漫画家・さかもと未明　棋聖戦は“魂の勝負”よ！ - MSN産経ニュース

ヘラルド朝日に名人戦の英文記事が載った

　ヘラルド朝日のネット版に、先日の名人戦の記事が載っている。

asahi.com（朝日新聞社）：A strong rival brings out strength of character - English

　記事は、関根阪田のライバル関係、升田大山のライバル関係に、森内羽生の関係がなぞらえられており、また、二人の永世名人資格者が若手からの挑戦を受けることになればファンは盛り上がるに違いないという結びで終わっている。

　

 

Shotest Shogi 3D の XBox360 版の近日発売は過小評価するべきではない

　日本に住んでいると XBox 360 は果たして売れているのだろうかと思ってしまうことがあるが、今日出た Gigazine の以下の記事を読んで認識を新たにした。

Wii、PS3、Xbox360の累計販売台数を世界の地域別で比較してみた - GIGAZINE

まず世界的な累計販売台数はこんな感じ。1位のWiiが2800万台、2位のXbox360が約1900万台、3位のPS3が1400万台弱です。

続いてアメリカ。1位のWiiが1200万台超、2位のXbox360は1200万台弱、3位のPS3は500万台弱となっています。Xbox360の独壇場だったところをWiiが巻き返している反面、PS3が大幅に苦戦。

日本。1位は600万台を超える好調な売れ行きを見せるWiiで、2位が200万台強のPS3。Xbox360は60万台ほどにとどまっており、アメリカ市場とは正反対に不調です。

上記の引用部分から明白な通り、日本だけのことしか知らないと、実態を見誤るおそれがある。やはり、Shotest Shogi 3D が XBox 360 で Tutor コンテンツを備えて、英語、中国語、ハングル、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語で利用できるようになるというのは、将棋の海外普及・伝播の歴史にとっては非常に重要な出来事になると考えたほうがよいだろう。