11月9日付で、外務省のホームページに、海外交流審議会の第5回総会の審議会会長サマリー(ポップカルチャーの文化外交における活用)と、ポップカルチャー専門部会報告書が開示されていた。
専門部会のほうでは、「ポップカルチャー」の定義について突っ込んだ議論が行われた模様である。その定義に関する部分を引用する。
本部会において、「ポップカルチャーの文化外交における活用」を議論する上で問題になったのは、「ポップカルチャー」という用語についてであり、アニメ、マンガ、J-POP、ファッション等の様々な文化を「ポップカルチャー」という言葉で一括りにすることについて疑義があるとの意見が数多くあった。
本部会においては、これら意見を良く検討、整理し、「ポップカルチャー」を「一般市民による日常の活動で成立している文化」として捉え、「庶民が購い、生活の中で使いながら磨くことで成立した文化であって、これを通して日本人の感性や精神性など、等身大の日本を伝えることができる文化」として考えることとした。この考え方によれば、浮世絵、焼物、茶道などは、其々の時代における当時の「ポップカルチャー」であったと言うことができる。
文化外交への活用にあたっては、こうした「ポップカルチャー」の中で、特に新たな時代の流れを切り開く最先端の分野で、広く国民に受け入れられ、強い浸透性と等身大の日本を表す思想性を有するものを対象にすべきであり、具体的には、アニメ、マンガ、ゲーム、J-POPのほか、ファッションや食文化等の分野が対象になると考えられる。
「庶民が購い、生活の中で使いながら磨くことで成立した文化であって、これを通して日本人の感性や精神性など、等身大の日本を伝えることができる文化」という定義であれば、将棋も当然このポップカルチャーのひとつとして数えられると考えられる。そして、将棋は、Naruto というアニメ、マンガで海外に発信され、任天堂の「だれでもアソビ大全」の海外版の Clubhouse Games というゲームソフトでこの秋から、欧米で発売されている。
専門部会報告書には、4.具体的取組に関する提言 があり、かなりの紙幅を割いている。筆者が重要と思うところをピックアップする(太字による強調は筆者による)。
(3)「ポップカルチャー」への関心を日本全体への関心に繋げる
(イ)個別分散的に海外へ広まった日本の「ポップカルチャー」を体系的に整理するとともに、日本文化全体の中に位置付け、その背後にある日本人の感性・考え方を海外に論理的に説明することに取り組む。
(ロ)近年、アジア・欧米の大学において、「ポップカルチャー」等の現代日本文化や日本語を学ぶために、日本関連学科への入学を希望する学生が増加しているところであるが、諸外国における現代日本文化の研究や学術成果には拡大する余地が十分にあると考えられる。このため、日本の「ポップカルチャー」の研究に対する助成制度の設置を奨励するとともに、海外の研究者や学生の交流を活性化し、現代日本に関する研究を促進する。また、当該研究成果を海外の大学等の研究機関に提供し、当該国における日本理解に繋げる。
(ホ)日本の「ポップカルチャー」への関心から、それ以外の日本に興味を持った若者等が容易にアクセスできる、日本紹介コンテンツを準備する。例えば、「ポップカルチャー」ファンの大半は、インターネット利用者であると予想されることから、Webサイト上に日本文化の総合紹介サイトを用意することも有効と考えられる。また、日本の情報を幅広く放送しているテレビ国際放送(英語)で「ポップカルチャー」や「ポップカルチャー」作品の背後にある日本人の感性や考え方を紹介する番組[外務省4]を放送することにより、同チャンネルの視聴者数を確保し、アニメ・マンガと併せて日本関連情報をより多くの人に発信することも一案と考えられる。
この、「日本文化の総合紹介サイト」というのは、誰がどのように開設するのか具体的になっていないが、そのようなものができるのであるとすれば、そのサイトの紹介項目に将棋が加えられるよう、将棋界は努力をするべきと筆者は考える。
また、専門部会報告書によれば、「ポップカルチャー勉強会(仮称)」という情報交換のサロンのような場もできるようだ。将棋が海外に広まっていくことに関心がある方は、ぜひ、冒頭のリンクから原文にあたられたい。
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