hidetchi氏が、ブログで将棋の販促指摘のルールにについて考察と提案をされている。
これを読んだ後、ひとつの疑問が筆者に浮かんだので、昨日、日本将棋連盟に問い合わせのメールを出してみたところ、メールアドレスからヤマグチさんという名前の職員と思われる方から回答をいただいた。こちらの質問とその回答は以下のとおりである(メールのヘッダー部分と筆者の住所は割愛している)。
日本将棋連盟御中
将棋の海外伝播などについてのブログ (http://shogi.typepad.jp/brainstorm/ )
を書いている寺尾 学と申します。平素お世話になっております。貴連盟が平成15年
に発行した「日本将棋連盟公式 将棋ガイドブック」に記載の反則の指摘についての
質問があります。お忙しいところ恐れ入りますがご回答いただければと思います。ご
回答内容は私のブログに適宜転載・引用したく思います。質問のきっかけは海外に
将棋のを紹介する動画を多数作成し、海外への将棋普及に多大な貢献をしている
川崎智秀さん( hidetchi さん)が以下のブログを書かれたことです。
ZAPATEADO ~サパテアード~ 将棋国際化における反則(二歩)指摘ルールの問題に関する考察と提案
http://hidetchi.blog68.fc2.com/blog-entry-259.html
質問の要旨は、対局中に対局者以外の第三者が反則を指摘できるか否かと、指摘できる場合の
「第三者」は誰か、一般の観戦者も含んでいるのかです。
「日本将棋連盟公式 将棋ガイドブック」には、反則の指摘について、49頁、72頁、および、84
頁の3箇所に記述があり、それぞれが微妙に矛盾をしているように思えます。
49ページ(第三章 将棋ルール)
”対局者以外の第三者は将棋の勝負に影響する情報を対局者に与えてはならない。”
72ページ(第四章 大会運営)
”☆ 助言
観戦者は助言をしてはならない。
基本的には対局者同士で解決をするもので、対局者の片方が反則、時間切れ、押し忘れを
指摘するのは全く問題はない。
またプロ棋士など、その大会の審判官が指摘するのも審判の役割なのだから助言にはあたら
ない。記録係がつくケースは、記録係は時間切れを除く反則を指摘する義務は持たないが、
明らかな反則は指摘しても差し支えはない。ただしこの場合最終的に勝敗を決定する際には
両対局者の合意と確認が必要となる。”
84ページ (第六章 プロ棋士対局規定 第8条 反則 第5項)
”対局者以外の第三者も反則を指摘することができる。”
では具体的な質問です。2点あります。
(1)ヨーロッパ選手権のようなアマチュアの大会で、観戦者は反則を指摘してもいいのでしょうか。
仮に、指摘してはいけない場合に、もし観戦者が反則を指摘した場合は助言行為となると思います
が、その場合の勝敗はどうなるのでしょうか。反則を助言を受けるまで指摘できなかった側が助言を
受けたということで負けになるのでしょうか。また、「第三者」に審判、立会人、記録係は含まれるの
でしょうか。
(2)プロ棋士対局規定には、「第三者も反則を指摘することができる」とあります。まず、正副立会人
および記録係はここでいう「第三者」にあたるのでしょうか。仮にあたらないとすると、ここの規定でいう「第三者」は、同室の他の対局者および観戦記者という想定でこの規定はできているものでしょか。また、正副立会人、記録係が「第三者」にあたらない場合、彼らは反則の指摘の義務があるのでしょうか。JT杯日本シリーズや朝日杯将棋オープンの一部など、一般公開されるプロ棋士の対局もありますが、その場合、一般の観戦者も「反則を指摘できる」ことになるのでしょうか。
質問は以上です。ご回答いただければ幸甚に堪えません。寺尾 学
email - [email protected]
以上が筆者の送った質問である。これに対する回答は
寺尾 学 様
対局規定についてお問い合わせいただき、
ありがとうございます。
あらかじめ申し上げておきたいことは、プロとアマとでは
規定の異なる場合があるということです。
(1)について
アマチュアの将棋大会において、プロと同じような
規定にするかどうかは主催者の意向がかなり反映されます。
対局会場の使用時間などもあり、プロと同じ条件には
なりづらい面も多いと思います。
主催者がこういう対局規定で行う、ということを選手に
あらかじめ、よく説明しておくことが必要だと思います。
(2)について
プロの場合は、日本将棋連盟の定めた対局規定で行います。
ご指摘のように「第8条 反則 第5項」に
「対局者以外の第三者も反則を指摘することができる。」と
あります。
この「第三者」は、タイトル戦の場合は正副立会人もそうですが、
通常の場合は記録係(観戦記者の場合もあります)ということになります。
その将棋をきっちり見ていること、棋力の高いことが必要です。
第三者が指摘すれば、対局中の将棋をいったんストップする
わけですから、間違いは許されません。
以上、取り急ぎ、ご連絡申し上げます。
であった。早速の返事にまずは感謝をしたい。
そして回答内容についてだが、全部の質問に明瞭な答えが返ってきているというわけではない。ただ、「日本将棋連盟公式ガイドブック」の第六章 プロ棋士対局規定の、第3章 対局の進行 第8条 反則 第5項
対局者以外の第三者も反則を指摘することができる。
の「第三者」については、「通常の場合は記録係(観戦記者の場合もあります)ということになります。」「タイトル戦の場合は正副立会人も」というように、いわゆる「大会関係者限り」と受け取れる見解が示されている。公開棋戦の一般観戦者が「第三者」になるのかならないのかについては明言をもらえなかったのは残念だが、われわれが「第三者」と聞いて普通思い浮かべるのは「対局者以外なら誰でも」ということであるが、これは、プロ棋対局規定の条項であり、通常、ほとんどのプロの対局は、東西の将棋会館内で一般には公開されない専用の対局室で行われていることを斟酌して、この規定上の「第三者」を解釈する必要があるのではないかと思った。この規定がいつできたものかわからないが、JT杯日本シリーズのような一般公開される棋戦ができる前にはできていた規定で、一般公開棋戦の開催が規定成立時に想定されていなかったのではないかと思われる。
筆者自身は、既に長年の間「見る将棋ファン」であり、国内のアマチュアの真剣な競技会には30年以上参加をしていない。なので、それらの大会の規定がどうなっているかはちょっとわからない。ただ、国内の大会で一般の観戦者が反則の指摘を行うことは助言行為にあたるのではないだろうかという漠然とした思いは持っている。仮に国内の真剣なアマチュアの競技会でも「日本将棋連盟公式 将棋ガイドブック」の49頁、72頁に準じた運用がなされているなら、hidetchi 氏がブログの結論として提案している、投了優先の原則の変更はその必要がないというのが今の考えである。
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