第2回電王戦の主催にも名乗り出ているニコニコ動画(ドワンゴ)が、どうやら2月21日より多くの将棋関連動画を日本将棋連盟からの申し立てで削除をしている。
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理由は、棋譜の著作権の侵害である。この集中的な削除は、筆者の見立てでは、ニコニコ動画に公式の将棋チャネルができたことと、電王戦の主催者となって生放送を実施したことから、ニコニコ動画の将棋ファンの視聴者が目に見えて増え、その際に他の放送事業者の映像がおそらくは無断でニコニコ動画にアップロードされている状態を放置しておくのはまずいとの判断が日本将棋連盟、ないし、日本将棋連盟とニコニコ動画の双方にあったからなのではと推測している。ならば、該当の放送事業者に根回しをして、番組の著作権を侵害しているとの申し立てを起こさせてコンテンツの削除を行えば波風は立たなかったものを、日本将棋連盟が「棋譜の著作権」を理由にコンテンツの削除を申し立て、ニコニコ動画がそれを受けて削除を行ってしまったという事態が生じている。ニコニコ動画のコンテンツ削除一般については次の記事が詳しいが、今回の削除が行われたことで、ニコニコ動画が、「プロ棋士の対局棋譜は著作物であり、著作権者は日本将棋連盟と認識している」ことが示されたのだと理解をせざるを得ないことになってしまった。
ニコニコ動画のこの削除は、電王戦の主催者であるニコニコ動画自身の手足を縛ることになるのではないかと思っている。なぜなら、現在、多くのコンピュータソフトは、開発者が日本将棋連盟から直接棋譜の提供を受けているのではなく、インターネット上から棋譜データを集めてきて、ソフト内に序盤のデータベースを持たせたり、学習をさせたりして、強くなってきたという認識を持っているからだ。仮に棋譜が著作物であるとした場合も、棋譜データは映像でも音楽でもないので、私的使用の範囲内ならば国内のサーバーからダウンロードしていればダウンロードする側が違法性を問われることにはならない。ただ、私的使用というのがくせもので、世界コンピュータ将棋選手権に参加し、優秀な成績の場合は電王戦に出場をするソフトウェアを作るために2ちゃんねるその他の2次的ソースから棋譜を開発者がダウンロードすることは私的使用の範囲内の複製に収まる行為なのだろうか。収まるのであればダウンロードする側に法的問題は生じないと思うが、私的使用とは「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用することを目的とするときは、基本的にその使用する者が複製することができる」に限られると理解をしており、おそらく、ニコニコ生放送で放映されるであろう、競技者が公募される世界コンピュータ将棋選手権、ひいては電王戦への参加が私的使用の範囲内に収まるのかどうかは正直非常に微妙だと思う。ソースを公開していたり、商用展開をしているソフトの開発者がそれらの棋譜を開発目的でダウンロードするのは私的使用の範囲内の複製に収まらないのはほぼ確実と筆者は考える。そういう成り立ちのソフトが多く出場する大会や、その勝者とのプロ棋士との対決を、今回の動画削除で「棋譜の著作権」を少なくとも表面上は認めたことになっているニコニコ動画が生放送するというのは大いなる矛盾を抱えた動きのように思える。非常に心配である。
本エントリーを書くにあたり上記のリンクのほか、次の記事も参照した。
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