梅田望夫氏の棋聖戦第1局のリアルタイムネット観戦記に以下の記述がある。
【棋聖戦・梅田望夫氏観戦記】(4)「孤高の脳」が生む無限の広がり (2/3ページ) - MSN産経ニュース
【棋聖戦・梅田望夫氏観戦記】(4)「孤高の脳」が生む無限の広がり (3/3ページ) - MSN産経ニュース私はいつも、一局の「無限の広がり」を書き尽くした本の存在を夢想する。一局の対局を通して、2人の対局者が脳の中で考えたすべてを書きおろしたら、どんなものになるのだろう。
「百冊くらいの、百科事典みたいに分厚いものになるでしょうか」
私は佐藤棋聖に問うたことがあるのだが、
「そうでしょうね。そのくらいにはなるのでしょうね」
いとも簡単に佐藤棋聖は答えた。
ここでは対局者の思考の分量の多さが話題になっている。これに触発されたかどうかは定かではないが、対局者ではなく、主に控え室での思考の一部を文字化しているといっていいネット中継のコメントの総量がどのくらいのものであったのかを振り返っている面白いエントリーがある。
さて、ここで急に、第19期竜王戦七番勝負第2局の▲渡辺竜王-△佐藤挑戦者の棋譜とコメント欄を貼り付けます。
梅田さんが書かれたコラムがリアルタイム観戦記と呼ばれるなら、ネット中継の棋譜コメントはどういうものなのか?どちらも観戦しながら書いているから観戦 記?それとも棋譜コメントは観戦記とは認められない?などと色々考えた挙句、見ている方々に判断を仰ごうと思ったわけです。
なぜこの将棋を選んだかというと、(1)竜王戦の棋譜、コメントは誰でも見ることができるソース。(2)自分が担当したもの。(3)やっぱり名局がいいでしょ。の3点から選出されました。
棋譜コメント自体の字数は13000字ほど。出来れば将棋盤に並べながら、一手一手進めて堪能してください。このご時勢、便利だけが正義というわけではないと思うので。では行きます。
さらりと書いているが、13000字といえば、400字詰め原稿用紙にして3433枚分の分量である。試みに「将棋世界」七月号の「千駄ヶ谷市場」の字数をざっと数えると、約8900字ほど(見出し、図面、本譜の棋譜手順を除く)になるので、分量だけでいえばそれよりも多いことになる。「千駄ヶ谷市場」で扱っているのは6局あるので、一局あたりにならせば、1400字強である。
13000字と1400字。この差は埋めがたいような気がする。ネット中継では、盤面再生のアプリケーションが使われた場合は、読者が見られる局面図は手数の分だけ存在する。紙媒体ではそれだけの図面を限られた紙幅に詰めることは事実上不可能である。「千駄ヶ谷市場」では本譜の図面が23枚、参考図が7枚載せられている。今現在、将棋を伝える上での紙媒体がネットより優位に立っている点は、取材や執筆の時間が多く取れてより正確で深みのある記事を書ける可能性のほかは、参考図と考慮時間を載せられることくらいしかないのかもしれない。
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